サンプリング倶楽部 Vol.4 カフェ タブロー 感想

山本敦則 さま

いつも楽しくページを拝見させて頂いています、私は愛知県は知多半島の片隅の海辺の町でコーヒーの焙煎と抽出を20年ほど研究をしているものです。故襟立先生の開発した赤外線つきの直火焙煎機をさらに独自に改良して使用しています。
熱風式でなければ今の豆はいりきれないといった関口先生たちの意見には半分賛成ですが、半分直火の魅力も捨てきれません。直火の欠点は網目シリンダーの保温力と加圧力が弱いため、豆の水分が取りきれないことです。また長所は生火に豆が触れることで作り出される独自のアロマとメリハリのある味です。焙煎の工程のクリック前の加圧段階に欠点があり、後半のクリック以後に長所が生かされると考えてよいと思います。

そこでタブローの感想ですが、直火式の長所と欠点がそのまま出ていると思います。熱いうちは独自のアロマと抜けのよさがぐっと魅了しますが、少しでもさめてくると苦味の切れが悪く後口に残ります。
 ネルが詰まってくると抽出速度が遅くなり、不良成分を多く拾ってくるためこうした切れの悪い苦味が出てしまうことがありますので,2回目は新しいネルで抽出しましたが結果は同じでした。水分の抜けが悪いので直火で深く炒るとどうしてもこの欠点が出てしまいます。バッハの田口さんたちのもこうした傾向が見受けられました。
 送っていただいた豆をさっと手ですくったとき少しばかり軽く感じました、深炒りですからあたりまえですが、全体が軽くても一粒一粒は重みが感じられる軽さではなく、一粒自体も軽く感じられます。抽出液のアロマが少し足らないこと、215度くらいの最終温度、なども総合判断すると、高い火力と排煙能力で焙煎されていると思います。ダンパーと火力をもうすこしひかえて210度くらいの最終温度であげると直火のこうした欠点も和らぎます。この点は好みの領域でもありますから、あつかましいやつだと思って参考程度と考えてください。
 しかし、坂本さんのブレンドに対する情熱がこの欠点を相殺しています。深炒りでありながら軽やかさをかもし出すブレンド技術には脱帽です。そしてコーヒーに対する志の高さにはいつもあたまがさがります。赤外線については、そのノウハウがないため難しい焙煎機となっています、実際多くの仲間たちは熱風に転換したり、純粋な直火にもどったりしていきました。しかし標木さんの手記の中でそれを〜直火と熱風を併用した焙煎機〜と表現しています、赤外線という言葉は一文字も出てきません。氏の丁寧で厳格な性格と、文面からうかがえる言葉を配慮した書きかたから、これはすごいヒントであると私は勝手に思っています。併用!なんと含蓄のある言葉でしょう!どちらも否定はしていません。直火でなければだめだとも,熱風じゃないといけないともいってないのです。赤外線が曲者で、それを特殊な熱源と捉えると焙煎が混乱してしまいます。単に直火式を必要に応じて熱風に近くする補助バーナーと捉えるとぐっと焙煎が開けてきます。直火にこだわるなら、そして直火の欠点をいやというほど解ったら、この焙煎機ほど有効な焙煎機はないと思います。直火式の焙煎機と坂本さんの情熱が葛藤したさまがコーヒーからひしひしと伝わってきました。コーヒーはうそをつかないと、そのときあらためて実感しました。そしてそれはコーヒーをいつも真摯に研究するもの同士であるから通ずることだと思います。今後ともメールでやり取りしながらお互いに切磋琢磨しようではありませんか。宜しくお願いします。

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