週間コーヒーコラム94

憧れのピーツ2、マイアミ〜珈琲の旅最終回

 さぁ! 今日はいよいよエミリービルのピーツ社http://www.peets.com/ 訪問です。

 朝、約束の時間に遅れないよう早めに地下鉄で向かいました。と云っても、しっかり早起きして市内のピーツコーヒー&ティーを3店廻りましたが、、、。

 地下鉄のチケットの買い方が分からずに時間をくったり、タクシーが道を間違え約束の時間が気になったり、期待がふくらんだり、そわそわする我々は更に興奮状態になっていきます。

 おお、ここだ! サンフランシスコの市街から少し離れたところにあるオフィス併設の工場は想像していたものより大きな建物でした。 少し遅刻してしまいましたが、受付を済ませると、すぐにJim Reynolds(coffee buyer and roastmaster)さんが迎えてくださいました。http://www.peets.com/abtu/13/4.5_bios.aspこの方です。

 受付からカッピングルーム、シンプルで上品ですが、ところどころに飾られている珈琲産地のものだと思われるタペストリーや絵、写真などがエキゾチックでポップで洗練されています。(かっこいいじゃないか!思ってました)挨拶握手して、珈琲版画で有名な奥山さんの作品や色々な柄の手ぬぐいをお土産として差し上げ、僕らは、工場見学者は必ずかぶるキャップとピーツコーヒー&ティーのスタッフしかもらえないバッチをプレゼントして頂き、みんな顔を見合わせて(ラッキー)ってニコニコしてます。 そうそう、レイノルズさんのとなりで穏やかな笑顔で静かにしているかっこいい男性がいます。Doug Welsh(director of coffee purchasing)http://www.peets.com/abtu/13/4.5_bios.asp さんで、John Weaver(master roaster)さんと共に、ピーツコーヒー&ティーのクオリティをコントロールしている方です。

 カッピングルームには、サンプルロースターと何十ものカップが並んでいて、毎日毎日の焙煎した豆や各地から送られてくるサンプルをカッピングしてるんです。

 いよいよ工場見学です。 レイノルズさん自ら案内してくれます。

 天井が高く薄暗い工場では巨大な100キロ位のプロバットが3台フル回転してます。 おお〜、昨日今朝と飲んで驚いたコーヒーがここで焙煎されているんだ! 豆が煙を発てながら勢いよく冷却槽に排出されます。 毎朝5時から連続で焙煎をして、全ての焙煎は記録し、カッピングするそうです。 さかんにスプーンで豆を取り出しチェック、目で見て臭いを嗅いでスプーンを戻す作業の繰り返し、しかしまさにクラフトという趣で丁寧に丁寧に焙煎しています。 この工程が、マイアミで何回も聞いた「ピーツの焙煎は真似ができないよ!」という評価に繋がっているんでしょう。 ポイントポイントでサンプルスプーンの豆を見て嗅いで、その直後に火力のコントロールをしてました。 特に香りに神経を集中しているようでした。

 僕は、以前日本の自家焙煎店レベルの量で無いとデリケートな味わいは出せないだろうと勝手に決めつけていましたが、ピーツの焙煎を見てから、自家焙煎店レベルの生豆の質や焙煎、カッピング技術では、直ぐにクオリティアップにも限界がきてしまう、ことを実感しました。 トップクオリティの生豆を仕入れられるちからを付けて、その魅力を引き出す焙煎、そのレベルをカッピングしコントロールする仕組み。 今までのロマンと文化と印象批評の自家焙煎店レベルではできないクオリティの世界が見えてきました。

 メンバーはバーナーを覗き込んだり冷却槽の豆をさわり冷え具合をチェックしたり、焙煎の行程をじっと見たり、どんなタイミングで火力調整しているか、、、ちょっと見ただけでは分からないのは知っていても、ついつい欲張って聞いたり見たり覗いたり、、、、。

 辺りを見回すと生豆の入った麻袋が山積みになってます。 ひとつひとつチェックしていくと、本当に宝の山です。 よだれをだらだら流しながら(多分)スゲ〜凄い良い豆だあ〜、こんなにいっぱいあったら1袋くらいもらっても分からないんじゃない? なんて詰まらない冗談云いながら、パッキングの作業他を見学、カッピングルームに戻りました。

 ローストしていた3人の方もパッキングの方も皆さん、とてもフレンドリーでピーツの珈琲を誇りに思っているのが伝わってきました。

 Doug Welshさんがコーヒーの用意をしてくれています。 カフェプレスでいれたコーヒーをマグカップで頂きながらReynolds氏を囲んでまたまたコーヒー談議。 今や伝説の人と化しているピート氏の事、産地の話、スターバックスの事、焙煎機やマーケティングについてなど尽きる事なく会話は続いていきます。 発せられる質問に一つ一つ丁寧に細かく答えてくれるReynolds氏。 逆に日本の珈琲のこと、マーケットのこと、僕らのこと、、、聞かれました、関心があるようでした。 そんな夢のような時間を過ごした我々はピーツの魅力に取り付かれ本社を後にしました。

 素材、焙煎、カッピング、、、、があって、店舗での接客、お客様へ、、、クオリティの実現の為の、AtoZを垣間見ることができました。 ひとつひとつクリアーしていけば、我々にももっともっと美味しい魅力的な珈琲をお客様に届けることが出来る! 希望がわいてきますが、結構ハードルは高そうです。

 興奮しながら、タクシーの中で喋りまくっていると、バークレーです。 スペシャルティコーヒーを巡る長い旅の最後を飾るのはピーツコーヒー&ティー発祥の地にある一号店です。 アメリカのスペシャルティコーヒーの歴史はここから始まったんです。http://www.tokyo-gas.co.jp/task/usa/star.htmlその店は昨日行った3ヶ所のピーツよりさらに地元に密着しているように感じました。 それは繁華街(昨日のお店)と住宅地(発祥の地にある一号店)の差なのか、、、中に入るとどのメーカーのチェーン店よりも洗練された雰囲気に包まれています。 この居心地のよさは決して他の店では味わえないピーツ独特のもののように思いました。

 昨晩、スターバックス成功物語を読み返していると、ボストンにスタバが進出した時のエピソードがありました。 1975年に創業し、1994年100店舗余りになって盛業していた《ザ・コーヒー・コネクション》をスタバは最初で最後の買収をしたそうです。 そのコーヒーコネクションの創業者で現在SCAAや一連のカップオブエクセレンスで指導者的立場のジョージ・ハウエル氏は、かれが大学院生だった頃にピーツの芸術的コーヒーに巡り会い、ボストンで自分の店を開き、試行錯誤の末に成功していたのでした。

 この店こそが、「プロのつぶやき89、マイアミSCAAリポートその(5)」でMane Alvesさんが仰っていた、東海岸の今は無き名店《ザ・コーヒー・コネクション》なのです。

 そうです、1970年代初期に、Jerry Baldwin(director)http://www.peets.com/abtu/13/4.5_bios.asp さんとジョージ・ハウエルさんは共にピーツのコーヒーに出会い、コーヒーを仕事として、東海岸と西海岸で名店を築き、今のアメリカから始まるスペシャルティコーヒーに流れているんです。

 これで、4月に行ったマイアミ、シアトル、サンフランシスコ珈琲の旅リポートも終わりに近づきました。

 しかし、バークレーのスタッフの皆さんは驚いたでしょうね。 突然日本人のグループが入ってきたら、ピーツのTシャツは着ていは、キャップは被ってるは、スタッフのバッチはしてるは、、、、でも、訳を知ると本当ににこやかに自然に他のお客さんの迷惑にならないように接してくれました。

 さぁ、あとは帰るだけです。 勿論翌朝もピーツ巡りをしました。 お店は10回以上行って、お土産は100ドルは軽く使ってるし、満足満足です。

 と、いうところで目出度くおひらきとします。 書ききれないエピソードはこれからも折りにふれて紹介していきます。

 あぁ、来週は何を書こう!

2001年7月14日 坂本孝文

 
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