週間コーヒーコラム91

マイアミSCAAリポートその(7)

 マイアミも最終日、いよいよ大詰めです。

 今日は、ぶらっと寄った(なんだかいつもフラフラぶらぶらっと寄ってますが、、、)《グアテマラのブース》にクライッマクスが待ってました。

 今回の旅行で、取り分け印象的だったのは、《グアテマラのブース体験》と《ピーツコーヒー&ティー》です。(この二つが僕のコーヒー人生の後半の方向を明確にしました)

 と、いうことで「ブラジルのカップセミナー」の時間まで、今日も今日とてブース巡りに向かいました。 3日合わせて何時間見て廻ったんでしょうか? これだけ時間を費やしてもまだまだ見足りません。 本当にすごい規模ですね〜! SCAAは、、、。

 通りかかった《グアテマラのブース》でコーヒータイム。
Anacafe http://www.guatemalancoffees.com/

 ポットが置ける場所は7箇所、そのうちの5箇所にポットが置かれています。 どれどれ、ラベルを見るとグアテマラの7つの地域から選ばれたものが入っているらしい。

 コーヒーをカップにとり飲み始める一同。 真剣な顔になっていく。「ん〜ん、これは、、、」「あれれれれ〜、、、!」「おいおい!まいったね〜!」「え〜っ、美味いよ〜!」

 メンバーが全員顔を見合わせて、目がテン! まん丸! 呆然驚愕唖然あんぐり、、、。

 今までどこのブースで飲んだものよりも印象的な味のコーヒーがグァテマラにありました。 しかも7つの地域ごとに、それぞれ見事に違うキャラクターです。

「いいねぇグアテマラ!」ヴォアラ達ちゃんの大きな声が響いてます。 それからすべてのコーヒーを飲み「これはどうだあっちの方ががいいぞ」と大品評会へと発展していってます。 我々が大いに興味を示したのをみてディレクターのリズが説明を始めます。 次第に熱を帯びていく丸山健ちゃんとリズの会話。「あなた達はどの産地が美味しいですか?」「僕はこれ、ウエウエテナンゴが一番です」「僕も同じで、ウエウエテナンゴ!」偶然にもメンバーの意見が揃います。

「本当?」「本当ですよ」「今までの日本の人達は、このタイプは酸っぱいと云って嫌いでしたよ!」「いやいや、僕達はこれが気に入りました」「お〜っ、そうか!分かりました。 実は私もこのウエウエテナンゴが好きです」

 アンティグア、アティトラン、サンマルコス、、、順々に味わい香りを何度も何度も確かめます。 どれも、香りが印象的で後味の切れが良く、上品で上質なアシディティ(酸味)がコク、余韻、甘みと引き立てています。 口にふくんだ時のクリーンさもセンシティブな感覚も際だっています。

 どうも、すみません、表現がかたいですね。 気持ちよいフルーティーな香り、クリーンな味わい、爽やかなアシディティ(酸味)がとりわけ!です。 えっ?酸味? そう酸味と書くと嫌なイメージだったり、酸っぱい感じを思い浮かべたり、私酸味の無いコーヒーをお願いします、なんてうちでも良く云われます。 で、そういう誤解を避けるためにアシディティなんて言葉を使ってます。 コーヒーはフルーツですし、高品質豆はみんな高地で温度差の大きい、ミネラル分や有機質の豊富な土地で産します。 そういう土地では、酸味が豊かな実がどんどん熟してくると酸が減って、甘みが増してきます。 そのバランスが良いと香りが高く、後味に切れがあり、余韻が長く、透明な味わいの、、、スペシャルティコーヒーになります。 深く焙いても、焦げないで甘〜く後味の良い香ばしいコーヒーになります。

 う〜ん、何がなんだか分からなくなりました。

「産地へ行くならいつ頃がいいのか?」「1月か2月がベストだ」「1日幾らくらい予算をみておけば産地をまわれるか?」「僕達が伺う時はどうすれば良いのか?セッティングしてもらえるのか?」「あぁ、行きたい!」「良し、行こう!」「そうだ、6月6日に、SCAAとAnacafeでインターネットオークションをやるから、あなた達も参加しなさい!」「えーっ、そんな無理でしょう」「大丈夫、大丈夫、今参加案内持ってくるから、、、」

 そんなこんなで、6月6日に丸山珈琲の健ちゃんが代表で参加、ゲットしちゃいました。 どうしよう?(詳しい話しはまた書きます)

 今思えば昨日帰りがけに偶然覗いた部屋で今飲んでいるコーヒーをサンプルロースターで焙煎していたMane Alves氏と出会った時が始まりだったんですね〜。

「僕のところはグアテマラ専門店にしようかなぁ」とすっかりこの国のコーヒーが気に入ってしまったヴォアラ達ちゃん。 みんなも頷いています。 さかもとこーひーはもう6年7年グアテマラを置いてません。 どうにも納得がいかなくて、止めてましたが、これでグアテマラが世界中でそのクオリティの高さを賞賛されているのが、ガテンガテンガテン! しました。

 本当に一瞬でスペシャルティコーヒーの神髄を体験しました。 (伝えきれないので、グアテマラについてはこれから度々報告します。 付録で、一番最後に《グアテマラの産地の特徴》をAnacafeの資料からまとめておきます。 興味ある方は参考にしてください。)

 さぁ、今日は頑張って最後の《ブラジルのブースでカッピングセミナー》まで行きます。 興奮状態で2時までスタンプラリーしながら、SCAAのブースでお土産を買ったりしてました。(最後なのでもう欲しいものはだいぶ売り切れてました)

 少し待たされて、いよいよブラジルのカッピングです。ガラス張りの部屋に参加者がひしめいていて、健ちゃんが通訳しますが、離れているので説明が良く分かりません。 日本人は我々の他に珈琲工房堀口さんとその連れの方が一緒でした。 堀口さんとは前夜祭の会場でばったり会いました、その後ジャマイカを廻ってきたようです。 『堀口さん、疲れてるよね〜、UCCのツアーで、飛び回ってるみたいだし。』って、バグ郷さんが心配してました。

 8つあるカップに粉になったコーヒーが入ってます。 スタッフが手際良く熱湯を注いでいきます。 まずは上に浮いている泡と沈まなかった粉を取ります。

  • Aroma、Flavor
  • Aftertaste
  • Acidity
  • Body

を各10点ずつに分け、合計50点として採点していきます。 ただし5点を平均点として、5点以下と言うのは、よっぽど悪いものに限ります。

  1. CERRADO(NATURAL)
  2. SUL DE MINAS (NATURAL)
  3. SUL DE MINAS (PULPED NATURAL)
  4. CHAPADA DE MINAS(PULPED NATURAL)
  5. SAO PAULO(PULPED NATURAL)
  6. PARANA(PULPED NATURAL)
  7. MATAS(PULPED NATURAL)
  8. BAHIA(WASHED)

次に、カッピングスプーンでコーヒー液をかき混ぜながら香りを嗅ぎます。 皆真剣になっていきます。 嗅いだ後スプーンにコーヒーを取り勢いよく吸い込む。 僕はこの辺から、一気に集中してまわりが見えなくなりました。 紅茶、ワイン、コーヒーとテイスティングの時に音をたてて味をみます。 それぞれ、音は違いますが、、、。

 揮発性の香りが分かりやすい、舌全体で感じるように、理由は色々あるようですが、最近、特に思うのは、舌に強く吹き付けることによって、ただ飲み込んだり口の中に行き渡したりするよりも、はるかに微妙なニュアンスを感じ取れるようです。 しかも、毎日のトレーニングによって、瞬間的にはっきりと正確にわかるようになるようです。

 まず、1番、2番と進みます。「あっ!汚れた味だ」次は3番から先へ、微妙だが、違いははっきり分かります。 僕は7番が印象的でした。 アシディティのキャラクターがクリアーで立体的に感じました。 まさにアトラクティブ(魅力的)でした。 達ちゃんは8番の良さを強調してました。 もう少し焙くともっと良くなる! と云ってます。

 僕には少し重くかんじましたが、云われてみると良くわかります。 7番はPULPED NATURA8番がWASHEDです。

 別のグループの方で、何をのんでもすっぱいすっぱいと言っていた人が印象的でした。 アシディティの質を理解出来ずに、酸っぱいと感じるようです。 この感覚が、今まで日本に入ってくる高品質豆が年ごとにロットごとにどんどん悪くなった遠因に思います。(自家焙煎店が悩んでいる問題です) 良質のアシディティ(酸味)に酸っぱいとクレームが付き、産地の方々は日本はアシディティがダメなんだと考え、古い豆や低地産の豆を用意したようです。 これは最近、日本でも良く聞きますし、SCAAでも聞きました。 そのような豆は後味悪く、香りもぼけて、コクも無いし深煎りに耐えられません。 堀口さんはNATURALに興味が強いようで、2番を強調してました。 僕の印象とはだいぶ違っていたようです。

 僕には1番2番は汚れの味を感じました。 これは、国連コーヒーを普段飲み慣れてるのが効果でてたように思います、すぐ感じました。

 こうやってマイアミは終わっていきました。 お付き合いありがとうございました! 来週からはシアトル(エスプレッソヴィバーチェ、スタバ1号店)とサンフランシスコ(ピーツコーヒー&ティー)です。

 色々とご感想、ありがとうございます、またお待ちしてます。

2001年6月23日 坂本孝文

 

では、(付録)です。 《グアテマラ情報》

ANACAFEプレゼンテーションより

グアテマラはアメリカ大陸中央、ポルトガルと同じくらいの広さ

地質は《火山堆積物と石灰岩》から形成されて、《ミネラル分》と《有機質》が豊富である。

国土の2.6%に栽培されて、100%アラビカ種、ハンドピック、100%水洗式。

アンティグアはグアテマラのコーヒーヒストリが始まったところ、1700年代中頃キリスト教牧師が修道院の中庭を飾るために植えた。

1880年までにもっとも重要な輸出作物になった。

輸出の83%は米国ドイツ北欧日本へ輸出、日本向けは4%〜9%へ15年ほどで伸びている。

この5年間で日本はPWとEPWの買い付け国からSHB買い付け国へ転換している。

グアテマラのコーヒー市場は競争力がある。

6万人を越えるコーヒー生産者は零細で、殆どの人が収穫したコーヒーを組合の加工所で処理する。

農園は小規模〜大規模まで2000を越える。

コーヒー輸出会社は80社、そのうち10社が協同組合。

輸出の85%は大西洋側、15%が太平洋側の港から船積みされる。

コーヒー生産者は社会問題とエコロジーにも真剣に取り組んでいる。地域開発基金を設立して教育健康部門の資金援助をしている。

エコロジーは、グアテマラのコーヒー農園が中央アメリカ最大の「人工の森」を形成し、コーヒーとシェイドツリーによる森は1日に400万〜500万Tの酸素を生み出している。

刈られたシェイドツリーはグアテマラで使われる薪の16%を担う。

3800万本のシェイドツリーは小鳥や渡り鳥にとっても重要な役割を果たしている。

果肉と粘液は肥料になる。

殻はドライヤーの燃料。

水洗処理の水は90%減らした。パーチメントコーヒー1袋を生産するのに必要な水を、2000Lから200Lに減少させた。

美味しい珈琲を作る為には、多くの努力、正確さ、厳しいハードワークが必要で、そのことを知る人は少ない。

実をもっとも熟した時に手摘みしなければならない。

収穫後数時間のうちに処理をして、発酵を避けなければならない。

フルーツは手動か機械式の脱穀機を使い種を取り出す。

正確に目盛りのついた回転翼と固定刃の間でかき混ぜる、間隔が狭すぎたらパーチメントは割れて、豆と外皮がダメージを受ける。

発酵層に入れるのは、2〜3時間以上かけてはいけない、発酵のムラにつながる。

発酵時間は14〜40時間かかるが外気温で変わる。

発酵はミューシリッジ(粘着液)と呼ばれる実に付いたゼリー状の物質を取り除くために行う。

このプロセスのタイミングが難しい。

きれいになった豆はパーチメントに状態で乾燥に移る。

グアテマラの大部分はコンクリートかレンガの上で太陽の下、完全に乾かす。

広げた豆の厚さは1インチ以上あってはいけない。

15〜30分毎に混ぜ返し、充分に乾かさなければいけない。

乾燥には5〜7日間かかる。

天候が悪い時は乾燥機にかけられる。

乾燥機内の豆の温度は45℃を超えてはならない。

天日乾燥をシュミレーションする。

乾燥豆の水分含有率は正確に11〜12%の間、乾燥が終わると、麻袋に入れられて65%前後の湿度で保管する。風邪通しの良さが大切である。

麻袋はドライミルに運ばれて、パーチメントを取り除く。

パーチメントは脱穀機の中で、摺り合わせて、グリーンコーヒーになる。

振動機を使ったり篩い機を使ったり、サイズとウエイト別に分類する。

最終工程は電光選別機か手作業による。

最高の豆を保証する方法は「熟練した」「正確な」「手によって」これが唯一である。

コーヒーは高度2000Mの山の斜面で栽培され、やさしい気候に恵まれている。

グアテマラの気候と降雨パターンはコーヒーにとって理想的である。

主たる地理的影響(太平洋と大西洋、火山湖、テウアンテペック平野)が気温を高地温暖に保ち、霜を防いでくれ、豊かな火山性石灰土壌に恵まれている。

そして多くの川とせせらぎが人里離れた加工場に水と電力を供給し、これらのおかげで、どんなコーヒーも収穫後数時間以内に処理できる。

《地域別の特徴》

トラディショナル・アティトラン

  1. 高度、、、1500〜1700M
  2. 気候要因、、、大きな火山湖
  3. 年間降雨量、、、800〜2300MM
  4. 平均気温、、、20〜23℃
  5. 湿度、、、75〜85%
  6. 原則的乾燥方法、、、天日
  7. シェードツリーのタイプ、、、グラビレアとインガ
  8. 収穫時期、、、12〜3月
  9. カップの特徴、、、スパイシー、ナッツ、強いアロマ、フレーバーは甘く複雑、スムーズな酸味と強いボディ、長く時にスパイシーな後味。

レインフォレスト・コバン

  1. 高度、、、1300〜1500M
  2. 気候要因、、、大西洋流域
  3. 年間降雨量、、、3000〜4000MM
  4. 平均気温、、、15〜20℃
  5. 湿度、、、85〜95%
  6. 原則的乾燥方法、、、ドライヤー
  7. シェードツリーのタイプ、、、インガ
  8. 収穫時期、、、12〜3月
  9. カップの特徴、、、心地よい芳香と風味が他地域とはっきり区別、バランスの良いデリケートな酸味、クリーミーで強いボディ。

ボルカニック・サンマルコス

  1. 高度、、、1400〜1800M
  2. 気候要因、、、太平洋流域
  3. 年間降雨量、、、4000〜5000MM
  4. 平均気温、、、21〜27℃
  5. 湿度、、、70〜80%
  6. 原則的乾燥方法、、、天日とドライヤー
  7. シェードツリーのタイプ、、、インガ
  8. 収穫時期、、、12〜3月
  9. カップの特徴、、、クリアーでソフトな酸味、スイートでメローなフレーバーとアロマ、スムーズでライトなボディ、強いコーヒーの特徴。

フライハネス・プラテマウ

  1. 高度、、、1400〜1800M
  2. 気候要因、、、高地の平原
  3. 年間降雨量、、、1500〜3000MM
  4. 平均気温、、、12〜26℃
  5. 湿度、、、70〜90%
  6. 原則的乾燥方法、、、天日
  7. シェードツリーのタイプ、、、インガ
  8. 収穫時期、、、12〜3月
  9. カップの特徴、、、口を包む濃くバターのようなボディ、複雑なフレーバーが強まる、後味は長い、良い酸味でとてもバランスが良い。

アンティグア・クラシック

  1. 高度、、、1500〜1700M
  2. 気候要因、、、谷間
  3. 年間降雨量、、、
  4. 平均気温、、、18〜22℃
  5. 湿度、、、コンスタントに65%
  6. 原則的乾燥方法、、、天日
  7. シェードツリーのタイプ、、、グラビレア
  8. 収穫時期、、、1〜3月中旬
  9. カップの特徴、、、フローラルなアロマ、フレーバー、明るくはじけるようなボディ、充分な酸味、バターのようなボディ、コーヒー鑑定家最も推奨するコーヒー。

ニューオリエンテ

  1. 高度、、、1300〜1700M
  2. 気候要因、、、大西洋
  3. 年間降雨量、、、1800〜2000MM
  4. 平均気温、、、18〜25℃
  5. 湿度、、、70〜80%
  6. 原則的乾燥方法、、、天日とドライヤー
  7. シェードツリーのタイプ、、、インガ
  8. 収穫時期、、、12〜3月
  9. カップの特徴、、、バニラのようなアロマ、スムーズなボディとクリアな酸味、甘くてカラメルのような強いフレーバー。

ハイランドウェウェ

  1. 高度、、、1500〜2000M
  2. 気候要因、、、テウアンテペック平野
  3. 年間降雨量、、、1200〜1400MM
  4. 平均気温、、、20〜24℃
  5. 湿度、、、70〜80%
  6. 原則的乾燥方法、、、天日とドライヤー
  7. シェードツリーのタイプ、、、インガ
  8. 収穫時期、、、1〜4月
  9. カップの特徴、、、口のなかで層をなす深いフレーバー、とてもきれいな酸味、酸味とボディが絶妙なバランス、後味が長く続く。
 
Copy Right 1999 8
さかもとこーひー