週間コーヒーコラム90

マイアミSCAAリポートその(6)

 やっと、4月23日(月)の朝になりました。リポート6回目はマイアミhttp://www.scaa.org/の最終日です。

 SCAAマイアミもラストになって、さらにヒートアップ! 今日は、「バリスタ選手権」「グアテマラのブースでの感激衝撃劇的な遂に出会った愛しのコーヒー!!!!の数々」 最後は「ブラジルのブースでのカッピング体験」三つの大きなトピックがあります。 当然今回だけでは報告できません!

 まずは、「2nd World Barista Championship」からご案内しましょう!

 我々のWorldエスプレッソ開眼は初日の予選見学から始まりました。

 司会のジョージサバドさん(オーストラリアのマスターバリスタ)の突然の呼びかけによる尾道バグの郷さんがアジア人初の参加をしたこと。「ミスター・ゴー、ミスター・ゴー、アーユーレディ?OK!」(結果はセミファイナルには進めませんでしたが、ぶらっと見学中に声をかけられ、マシーンも初めて、言葉もルールも分からず、ダスターやゴミ箱の位置も把握していない状態で上着を脱いだだけでの参加ですから、その勇気と実力を称えたいと思います。)

 では、郷さんへの独占インタビューです。「僕は、いままではあの手の状況でイエスとは言えなかったんです。 必ず、ノーでした。 つい、イエスと云ってしまった。 と云う感じでした。 出場する事を前提に見てる時間が少しあったらよかったんですが突然だったので、ゴミ箱の位置も把握してないし、、、。 セミオートの設定もやりたかったんですが、時間を無駄にしたくなかったので諦めました。 ただただ緊張と恥ずかしさの45分間でした。
 豆は、会場にあった豆を使わせてもらいましたが、エキスの量が多かったので、30ccは取れてたと思います。
 僕は、飲んでないので分かりませんが、3カップのうち、2カップは、善い出来だったと想ってます。 飲んだ方、教えてください。
 来年のことなど、まったく、考えませんがいい経験をさせて貰いました。 皆さんとジョージサバドさんに感謝です。」

 はい、皆さ〜〜〜ん、郷さんに盛大な拍手をどうぞ、、、、!! パチパチパチパチ〜〜〜〜〜〜!!!

 本来こういうコンテストは身体の効く20代の若者の出番です。 我らはもう40代、動きがにぶり能書きばかり達者になってますので、コーチ役が適してます。 これをみてる20代のやる気マンマンのバリスタ諸君、あなた達の時代ですよ!(こんな僕も20代のころはカウンターの中で2時間3時間ピークが続いても息が上がらず、両手両足全部違う動きをしてました、ペティナイフもバースプーンもティーメジャーも手のなかで踊ってました)

 そして、そんな中に抜群に動きの良い、いかにも仕事が出来るバリスタがいました。 立ち姿が良い、仕事が綺麗、無駄のない流れ、、、、う〜んこれは、、、、!

 そんな彼が片づけが終わって我々の横を通り過ぎるその瞬間、健ちゃんの通訳で話しかけました。
「素晴らしい貴方の仕事に感動しました」
「なによりも、仕事の動きが綺麗で、貴方が一番だと感じました」
「握手してください」
「貴方の動きは日本の寿司職人の名人と同じだ!」
「写真をお願いします」

 突然日本人のグループが話しかけ、とまどっていたようですが、直ぐに我々の気持ちを理解してくれて、笑顔笑顔で握手です。 えっ? あっ、そうそう、その方が Martin Hildebrandt ( Denmark)さんです。 the World Champion Barista, winner of the 2001 Championship ですね。http://www.scaa.org/barista/index.html まさか、決勝勝ち抜いてチャンピョンになるとは、、、、。 振り返ってみると、他の参加者とはレベルが違っていたので、当然と云えば当然でしょう。

 僕らは予選セミファイナルファイナルと3日間通い詰めて、審査員と司会者そして参加者しか入れないエリアのフェンスに張り付いてました。 観客席がひなだんになってましたが、そんなところには座っていません。 審査員は味を見ると傍らのテーブルにカップを置きます。 僕らはフェンス越しにそっと手を伸ばし、どれどれフムフム、、、叱られなかったですが、、、、もしかしてルール違反か? もっとも予選から顔だしてる怪しげな東洋人グループでしたから、すぐ覚えられているし、不味かったらすぐに注意されるので、OKだったのでしょう。 エスプレッソカプチーノのレベルは色々でした。 納得の美味しさもあれば人によってはもう少し、、、。

 では、一番伝えやすいチャンピョンのオリジナルコーヒーを再現してみます。

 チャンピョンはオリジナルになると、、味の表現力、イメージ力が他のメンバーとの差がはっきりして、図抜けてました。

 そのオリジナルの珈琲は、しっとり濡れた極上のバニラビーンズ(審査員にわざわざ裂いて見せてました)フレッシュライムの皮を乳鉢で軽く摺って、そこにシュガーを入れてライムの香りシュガー。 少しのラム酒?。 バニラビーンズを入れてシェーカーで軽くシェイクした生クリーム。 フレッシュのレモングラスの茎?。 そしてエスプレッソ。 これをカクテルグラスにどう入れるか? まぁ、琥珀の女王の世界だけど、だいぶレベルが上です。

 ラム、エスプレッソの上に冷やしたクリーム。 その上にライムシュガー、それをカラメリゼ(バーナーで)そこにレモングラスも茎? をストローにします。

 グラスに口をつけると、カリっとカラメリゼしたシュガー。 そこから流れ込むクリームとエスプレッソはクリームラムライムバニラ全部の香りが脇役になりエスプレッソが見事に主役になってます。 しかも控えめなんだけど、無いと物足りないのがわかります。

 見事な構成力イメージ力でした。 カクテルの世界ですね。

 本当に素材のディテールまで神経を使ったオリジナルコーヒーでした。

 フレンチやバーマン、パティスリーなどの世界で良くコンテストをしてますね。 そしてこれからトップを目指す若者はそこを勝ち抜いて、階段を駆け上りスターになり、お店を繁盛させたり、各地から招待されて講演指導普及活動をしたりしてます。(当然名誉もお金もついてきますね)バリスタ選手権を見ていて、おなじような熱気を感じました。

 そして、チャンピョンと司会のGサバドさんはUCCさんの招待で今年日本に来られるそうです。 我々も会えるかな? もっとも彼の電話も住所も聞いてあるので、デンマークに行ったほうが楽しいでしょうけど、、、。

 表彰式の後みんなで祝福の挨拶にいき握手攻め、記念写真。「レベルが違ってたよ!レベルが」僕はひとりつぶやいてました。 チャンピョンに拍手〜〜!!!

 おまけがあります、その晩我々のホテルに司会のGサバドさんが訪れて、「ミスター・ゴー!ミスター・ゴー」探してます。 郷さんをみつけると握手、そしてなにやら話しながらビデオテープをプレゼント、、、、「Barista College」という彼のバリスタ学校のテープを持ってきてくれたのです。 いや〜、そんな思いでいてくれたなんて、、、、ここにも珈琲の味方がいた、と感激しながら、、、又又質問の嵐が続きました。

 あぁ、長くなりました、、、来週は「グアテマラのブースでの感激衝撃劇的な遂に出会った愛しのコーヒー!!!!の数々」最後は「ブラジルのブースでのカッピング体験」と続き、その後まだまだシアトル、サンフランシスコがあります。

 夏が来ちゃいますね、よろしくお付き合いください。

2001年6月16日 坂本孝文

 

(追伸) 通常はこれでお終いですが、せっかくのエスプレッソ体験ですので、僕がこの数年日本のエスプレッソを意識的に飲んだり、去年(2000年)の春の柴田書店エスプレッソセミナー(堀口さんが講師)今回のマイアミ、シアトル、サンフランシスコでの体験、エスプレッソヴィヴァーチェやBarista Collegeの本やビデオ、バグさんでの検証、FMIのセミナーでの質問、、、、によって得た今感じている結論を紹介します。

基本はマシンのセッティングですね、「豆の挽き方」と「タンピング」と「抽出量」「湯温」「抽出時間」「粉の量」等適正に合わせます。

タンピングの時に磨き(ポリッシュ)をかけることがあります。 ポイントはホルダー内の粉を均一にすることのようです。 抽出で圧力をかけますので、ひずみや弱い部分があるとそこから薄いコーヒーが落ちるようです。 少ない粉の量、短い時間での抽出ですから、雑な部分があると理想的なエスプレッソにはなりませんね。

タンピングの圧力は粉のメッシュや量に関係しますので、強いのが良い、とか弱めが良い、とかの問題ではありませんね。 ヘルスメーターで圧力を計っている場面を何回もみました。 実際には、複数の人が抽出する場合、圧力を強めに設定するとばらつきやすいようです。(人によって感覚が違うし、同じ人でも追われるとどうしてもばらつきますね)これらを理想的なコンデションに整えることで安定した、過抽出でも抽出不足でも無いベストの状態にできるわけです。
 それらをクリアーすることによって味わえるエスプレッソの魅力とは? ・まず僕が最初に感じたのは、「漉さない魅力」です。 ネルやペーパーで、つまりドリップでは漉されてしまう成分に魅力があるのでは? これは、カフェプレスにも共通していると思います。 特に感じるのは、オイル分ですね、それによる量感ボディフレーバー、、、。 当然、嫌な成分ざらつきよごれ後味の悪さ、、、が出てきますので素材の品質を非常に問われます。 ドリップのように抽出テクニックを使いづらいので、豆が悪いとストレートに不味さが出ます。 スペシャルティコーヒーのクリアーで後味が良く量感のある香り高い魅力は、エスプレッソやカフェプレスでとても良く表現されると思います。(エスプレッソを勧めて、カフェプレスを勧めないお店がありますが、僕には理解できません。もっともカフェプレスでは不味いコーヒーしか出来ないのならいたしかたありませんが、、、)

次が「圧力」ですね、9気圧で淹れるのがエスプレッソの特徴です。ドリップで、お湯が落ちていくのに任せるのとは違います。 9気圧かかることによってのみ抽出される成分がありそうです。 しかし、圧力によって嫌な成分もでそうですね、ペーパーもネルも無いし。 その辺のバランスが20〜30秒の時間と粉の量、メッシュ、湯温なのでしょう。

もうひとつ、最近感じているのが「乳化」の魅力です。 乳化?、、、なんじゃそりゃ? 乳化とは「水と油の関係を仲良くすること」ですね。 ドレッシングやシチュー、おでん、、、等々の円やかな美味しさは「乳化」の魅力です。それとエスプレッソがどうして?、、、エスプレッソと云えば「泡、クレマ」が特徴です。 クレマが何ミリだと凄いとか、砂糖をのせても消えない分厚いクレマ、、、とかエスプレッソの美味しさの目安のように云われてます。
 このクレマと美味しさの関係がもひとつすっきりしませんでした。 確かにきめの細かい泡がくちびるにふれるのは、気持ちの良いもので(ビールでもそうですね)すが、それだけじゃ〜納得できません。香りにふたをする、というのも良く聞きますが、まぁ〜そう云われてみればそうかな〜、くらいのものです。そこで出てきたのが「乳化」です。乳化は、熱、圧力、蒸気で(乳化剤もありますがエスプレッソには関係無いでしょう)促進されます。コーヒーに含まれるカフェオイルが熱と圧力と蒸気のパワーによって水と仲良くなり抽出されて、数十とも数百とも云われる揮発性芳香成分アロマが立ち上ってくるんじゃないかな?  如何ですか?  乳化のパワーによって味わいの円やかさと香りの豊さがエスプレッソの魅力を引き出しているように思います。

 探れば探るほど、素材のクオリティに行き着きます。 特に、コーヒーメーカー、カフェプレス、エスプレッソは素材が悪いとどうしようもありません。(今までの日本の自家焙煎店があんなのダメ!と云ってきた抽出方法ばかりですね!)

 エスプレッソはまだ苦〜い量が少な〜いというイメージで本来の魅力が広まっていませんし、カプチーノカフェラッテがメインですから、追求もされませんが、素材の問題に行き着きます。(カプチーノカフェラッテも素材が良いと目をみはる美味しさです)

 そんなことから最近僕は、スペシャルティコーヒーとプレミアムコーヒーの違いを体験してもらえるようなイベントの重要性を感じています。

 こんなこと考えました。

(付録)

  • 粉のメッシュが細かい>クレマがうすい
  • 粉のメッシュが粗い >クレマがあつい
  • 焙煎後すぐ  > クレマの肌理が粗い
  • 焙煎後3日4日> クレマの肌理が細かい > クレマが消えにくい

そうです、炭酸ガスの抜けの問題のようです。

2001年6月16日 坂本孝文

 
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