週間コーヒーコラム42

藁は作らない

 梅雨も中盤に入りました。毎日配達してますと、田んぼの稲がどんどんあおくなり、伸びてきます。この緑は木々のみどりとは又趣きが違って和むものがあります。田んぼを渡ってくる風も快適です。渋滞すると窓を閉めてエアコンに切りかえるのが情けないですが、、、。

 そんな中、思い出すのは93年(もう7年も前です)のお米の冷害と、その後に見聞きした優秀農家の情報です。

 多くの稲作農家の問題は、農薬によるアカトンボ、コモリグモ、アメンボなど益虫の減少による虫害への弱さ、育苗センターで作られる寒さに弱い苗、肥料、土作り他色々とあるらしいですが、私は専門家でもないのでここでは「稲作農家はコメを作らず、ワラを作っている」というエピソードから感じたことを書きます。

 稲作農家はコメ作りに精を出していると思っていましたが、ワラ作りに精を出している農家が多く、それに携わっている方々がそれに気ずいていないらしいのです。穂が出て、モミが出来、実が入りお米になるのに、原因は稲の密植と肥料をやるタイミングの悪さで、緑の稲はりっぱに茂りますが実の入りが悪い結果が多いそうです。青々と茂った稲を見ると満足感があるようですが、収穫は上がらないのです。その辺を冷害の中でも平年の8割9割収穫した優秀農家の方は、実に利に適った育苗、田植え、深水管理、肥培管理、、、、等などにより合理的に生産性を上げて美味しいお米を作っているそうです。

 歯切れの悪い書き方になってしまいますが、門外漢なのでお許しください。本題はここからです。
 自家焙煎珈琲に当てはめると何なのか?なんの為に自家焙煎をしているか、が大切だということです。「ハンドピック」が売りになっているお店があります。生豆の時と焙煎後に2回ハンドピックを行ない、店によっては3割4割と廃棄するようです。
 私は「ハンドピック命店」とジャンル分けしてますが、そういう店に行くと生豆の質の悪さに驚きます。これじゃ、選別しないと飲めないや!その辺はその店のスタイル(感動的なエピソードで取り上げられがちです)ですから私が云々することもありませんが、低レベルの豆はハンドピックしても生豆に無い味や香りは出ないのに、まして今は幾らでも高品質な生豆(選別もされている)が仕入れられるのに、理解できません。

 「新鮮さ」についても同じように考えられます。当店は豆売り店ですので、ご家庭での保存期間を考慮して、出来るだけ焙煎直後(当日焙煎したものから、平均すると焙煎後3日位の豆をお届けしてます、しかし、人気の無い豆は1週間位経つこともあります。)の豆を販売するようにしていますが、当日焙煎した豆しか売らない、或は注文を受けてから焙煎する新鮮さには敵いません。でも、そんなのは言葉のマジックで、コーヒーは焙煎後1週間が命です、と云う店の豆は1週間しか持たない焙煎なのです、と思ってます。どんなに良い豆でも古くなれば酸化して価値が無いと良く聞きますが、不味い豆は新しくても価値が無いと思います。美味い、不味いも飲む人の感覚、経験等によりますので、軽々しくは云えません。実際にマニアで無い家庭でそんなに頻繁に珈琲を買いに行くことは現実的でありません。
 気軽にあるていどのレベルの珈琲を楽しむ為には、何が出来て何が必要なのか、を手探りする毎日です。(雑に淹れてもかなり美味しい珈琲が出来れば、丁寧に淹れたら相当美味しいはず、という考えです)

 そんな一例二例ですが、「私は藁を作らない」これを心がけたのが農業についていろいろと調べた冷害後のことでした。私は「新鮮さ命、ハンドピック命」なんて安易なことはしないという戒めでした。(新鮮さ、選別は大切ですが、それだけでは解決しないという、ややこしい話しです)

 
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さかもとこーひー