美味しさを探して
常連のKさんから『坂本さんが追い求めたお酒や食べ物に興味があります。機会があったら読んでみたいです。』とメールを頂きました。先週の「棚から鷲づかみ」でBSCAとSCAJで開催した《シルビオレイテ氏のカッピングセミナー》に参加して、日本で世界的なカッピングセミナーを受けられる恵まれた時代になったことを書きました。で、僕は19で喫茶業界に入ってから・・・「プロの美味しさとは?」「一流と云われる美味しさとは?」を探して、色々と飲んだり食べたりしてきました。
スタートは勿論コーヒーの飲み歩きですね、千葉市内の店や都内の有名店に行って、飲んだり豆を買って帰ったりしてました。1975年前後からのことです。その頃、正直コーヒーって美味しいって思わなかったんですね。同時進行で紅茶も飲み始めました。ちょうど柴田書店から「紅茶読本」が発売になったんです。その数年後スリランカにご一緒した斉藤先生が書かれた本です。紅茶はリプトンの青缶と呼ばれるグリーンの缶を何缶も何缶も飲んでスタンダードな紅茶の味を覚えました。その後都内の紅茶の店が出来始めて行ったり、大阪まで行ったりしながら、リプトンやブルックボンド、日東、リッジウエイ、メルローズ、フォートナムメイスン等の高級品を飲むようになりましたね。で、そのまま紅茶の店で働き、スリランカへも行かせてもらい、独立へ進みました。貴重な経験は産地からのサンプルをたくさん味わったことでしょうか。
まだガイドブックも無い時代で、兎に角自分の舌や鼻に自信が無くて、味覚の基準が欲しかったのを思い出します。
先日もある友人から『結局美味しさって好みじゃないの』って云われましたが・・・それじゃプロにはなれないと思ってます。とりあえず、世間で一流と評価されているものや店を経験しようと、業界誌に載った店を訪ねたり、スコッチやバーボンを飲んだりしました。飲み物はテクスチャー触感噛み応えが無いし、一瞬で口から消えてしまうので、難しさを実感しますね。
それと本でも色々と本物と云われるものの知識を仕入れました。日本のウイスキーとスコッチやバーボン、ビール・・・日本酒でもアル添と本醸造、純米、味噌醤油、豆腐、きりがないですね。スコッチやバーボンはまだ少し高かったですが、ずいぶんと飲みました。カクテルやジンも好きでした。日本酒は二十歳の頃に酷く辛いおもいをして10年近く一滴も飲んでいませんでしたね。先輩がまだ珍しかった地酒の店に連れていってくれて感激したのが岐阜の辛口で有名な三千盛でした。日本酒ってこんなに奇麗で爽やかなお酒なのかとびっくりしました。20年位前ですね。それから地酒にハマって・・・しばらくすると地酒仲間で蔵見(酒蔵巡り)を毎年するようになりましたね。酒米、精米の話し、仕込み、火入れ色々なお話しを蔵元さんから聞けました。ここ5年程は年に数本しか買わなくなってしまいましたが・・・。同時にワインも飲み始めて、多い時は月に10本近く飲んでました。でも高いワインはほとんど飲めませんでした・・・が、その後ワインスクールに通ったりするようになって、時々は高級ワインを味わえるチャンスがあります。
そうそう、ハーブを庭で育てたのも20年近く前ですか、ミントだけで5種類も6種類も育てて使い分けたり、ディルでピクルスを作ったり庭中ハーブだらけでしたね。
食べ物では、あんまりお金が無いので、超高級なお店には行けませんが・・・蕎麦、洋食、うなぎ、天ぷら、お寿司、フレンチ、イタリアン通いましたね。数をこなしていくとだんだん見えてくるものがあるのと、自分の基準もできてきました。お酒も好きですが、甘いものも好きで、ケーキに和菓子・・・ケーキ屋さんもずいぶんと行きましたが、印象的だったのが九段のゴンドラさんのパウンドケーキとキルシュトルテ、お酒が効いていて、大人向けの味付けがお気に入りになりました。その後は代々木上原にできたばっかりのイルプルーシュルラセーヌ。毎月毎月車で通いましたね。アマ向けのフランス菓子教室の第一回にも通いました。店を休んで月に一回あの時は教室が六本木でした。和菓子は千葉や都内の老舗が中心で、駿河台下のささまさんからスタートして、最後は京都の嘯月さん。こうやって、素材レベルによる魅力の違いや、手抜きした仕事と丁寧な仕事の違いを身体で覚えていったと思います。
すみません、話しが迷子になってますね。そうやって、店巡りをしながら、調理や農業の基本原則を学び始めました。
植物が育つってどういうことか?土壌や気候の影響、光合成、栄養生長と生殖生長、肥料、熟しぐあい。調理は水を使った湿熱調理と水を使わない干熱調理・・・コーヒーのロースティングって干熱調理なのか!それによる化学反応。
じゃ、素材や調理を的確に判断するには?・・・そこで、カッピングですね。スペシャルティーコーヒーではカッピングのスキルアップがまず大前提だと思います。素材を選ぶ為にはカッピングがしっかりできないと話しになりません。まずは、どのような素材を手にできるかで、その後の可能性が決まってしまいますからね。素材に無い魅力は作りようが無いのは当たり前の話しです。そして、その素材を見極めるにもカッピングですね。そこで判断が甘いと焙煎でポテンシャルを引き出せません。また、焙煎が的確かどうかもカッピングです。ブレンドも同じですね。お客様のご感想をきちんと受け止める為にもカッピング能力が必要です。
で、最後に必要なのが味作り、味のデザイン能力ですね。手にした素材を見極め、お客様の好みを考慮して、自分のイメージを作り上げ、焙煎ブレンドする。たくさんのお酒やお菓子料理から伝わってくるイメージを感じ取るのが楽しかったんだと思います。それが、役にたっていますね。(おっと、パンのことを忘れていました。今年になってかみさんがパンを焼いてますが、最近は色々とバリエーションが増えてきています。)食べ歩きを書き始めたら、カッピングにつながってしまいました。
では、また・・・。
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《コーヒーはフルーツだ!》
2005年3月26日 坂本・丁寧な暮らし・孝文
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