週間コーヒーコラム26

続 コーヒー本2冊

 では、最初は自家焙煎の世界では有名なバッハの田口さんの本です。

「プロが教えるこだわりの珈琲」 田口護著  NHK出版
1400円

 田口さんはこの20年位コーヒーの新鮮さ、ハンドピック等の大切さを広め、さらに焙煎手法を公開して、自家焙煎店のレベルアップに大きな貢献をしてきました。私もずいぶんと参考にさせて頂きました。美味しい不味いの前にハンドピックした、芯残りの無いコーヒーが前提となり、焙煎度の違いによって味が変わるという今となっては当たり前のことも田口さんや他の先輩方の地道な普及活動があってひろまったことです。

 また、バッハグループを作り自家焙煎を仕事にしたい人々に道を開き、全国に鮮度、ハンドピックを重視した自家焙煎店を増やしてきました。TV、雑誌、学校の講師などでも活躍して著書も多くあります。

 「プロが教えるこだわりの珈琲」はそんな田口さんだから書ける本だと思います。NHKの生活実用シリーズであるこの本はアマチュア向けでありながら生豆や手網焙煎について多くの写 真とともに詳しく説明されてます。自分で手網焙煎する方が増えているので、そのような方には写 真も多く大変参考になると思います。構成も良く出来て分りやすい内容です。田口さんが訴えてきたことをアマ向けにまとめた本と言えます。

 しかし、時は流れ自家焙煎の世界も大きく進みました。(田口さんのキャンペーンがベースになっていますが)「生豆の正しい選び方」ではハンドピックの説明が多く農産物としての豆の質(肥料、栽培、精選管理等)に触れないのでコーヒーの生豆には欠点豆が15〜20%あるのが常識のように感じてしまいます。
 20年前にはハンドピック無しでは使えない豆しか仕入れられなかった小さな自家焙煎店も今では少量 単位でもプレミアムの生豆が手に入ります。
 家庭用レギュラーコーヒーのマーケットも拡大し、お客様に親切な店ならば鮮度を気にするより売りきれが心配なほど売れます。そんな時代にハンドピックばかりを大きく取り上げて選別 のそれほど必要で無い生豆をバッハやグループは使わないのはなぜでしょう。価格は充分に使えるものです。田口さんは産地にも詳しく、情報にもめぐまれ、繁盛店なので余裕もあるのに、高品質な豆からしか生まれない味や香りを求めないのでしょうか。抽出方法がいろいろと詳しく載っているのに、一番普及しているコーヒーメーカーについて書かれていないのはなぜだろう。プロペラ式(ムーラン式、ミルサー式)のミルは挽きを一定にしずらいし、熱を持ち微紛がでやすいのに勧めるのはなぜだろう。いつからプロペラ式のミルをカット式ミルと呼ぶようになったのだろう。等々疑問が次から次へと浮かびました。時代に追いぬ かれたのか、もう成功したのであとは後輩にまかせているのか。

 田口さんがひろめた「新鮮でハンドピックしたコーヒー」の先にある豊かなコーヒーの世界の可能性は我々後輩の世代の役割でしょう。

 次回の堀口さんの「コーヒーのテースティング」はそういう意味でこれからの自家焙煎店のものさしを提示してます。

 
Copy Right 1999 8
さかもとこーひー