プロのつぶやき

    週間コーヒーコラム251

真珠のコーヒー

ロシナンテAAの焙煎

気がついたら、この「プロのつぶやき」が250回を超えていました。もう、まる5年毎週書いてきたことになります。

5年前は、問屋さんからなんとか良い生豆を仕入れようと、そればかり考えていました。その生豆を焙煎で美味しくしようと工夫していましたが・・・深煎りだと美味しい苦味になるように、焦がさず焦がして、良いおこげを狙ってましたね。中煎りは苦味を抑えて酸味が強くならないようにイメージしてました。

フレーバーや味わいの表現もどうしたら良いのか難しくて・・・ワインや日本酒お茶の世界からヒントをもらったりしてましたが・・・コーヒー自体に無いフレーバーや味を表現はできません。正直、コーヒーってこの程度までかな?っと思ったこともありました。

これなら、紅茶で経験した最高峰の魅力のほうが上だなと思ったものです。紅茶には、それこそ花の香りだけでもダージリン、ウバ、ディンブラとキャラクターの違うフローラルを経験できるし・・・味だって繊細なビロードのような渋みは何とも云えない魅力です。ミルクを入れると又別世界の美味しさになりますし。

それが、スペシャルティーコーヒーの世界に踏み込んだこの3年少しで・・・本当にやりがいのある、楽しい毎日になりました。素材がレベルアップすると、味覚が向上し、カッピングのトレーニングを続けると素材の可能性が見えてきて、焙煎の工夫が的確になってきます。そんな繰り返しをしてきたこの3年ですが・・・今週毎日《ロシナンテAA》を焙煎してきて、この3年4年の変化の大きさをあらためて実感しています。

このロシナンテAAは文句無く素晴らしいコーヒーですが、焙煎に神経を使います。焙煎途中のカロリーの加え方やロースティングポイントのわずかな違いで、せっかくの香りが隠れたり、甘みのバランスが崩れたりします。テストローストでは、10秒単位で煎り分けて、カッピングしました。それらを並べてカッピングすると・・・ちゃんと香りも味わいも違うんです。もちろん、どれも素晴らしいんですが・・・それはまだ素材のレベルで、お客さんに届ける商品にはなっていません。うちの常連さんたちに、どんなバランス、どんな香りを届けたいか、どんな魅力を体験して欲しいか、そして、自分ではどれがベストな焙煎と判断するか・・・緊張しますね。

しかし、テストローストが終わって、仕上がってしまえば、あとは毎日狙い通りの焙煎工程になるようコントロールするだけですから、その途中途中の変化を楽しむ余裕が出てきます。焙煎初期に水分が抜けていく時の香りの変化、水分抜き後半、焙煎工程が進んでいくとき、煎り止め直前、ザ〜っと釜から出した時、冷却機で回っている時・・・それぞれの香りに酔ってしまいます。なんといっても、フローラルとオレンジのキャラクターが印象的でしょうね。少し冷めると複雑な魅力も追いかけてきます。繊細さとしっかりした力強さを併せ持っています。栄養状態、熟し具合と良いからでしょうか。

このようなコーヒーを手にして焙煎して常連さんに届けられるようになった、プロのつぶやきを書いてきた、この5年の大きな変化でした。お陰さまで、今週はロシナンテAAと感謝セットに注文が集中してまして、多分8月いっぱいくらいでおしまいになりそうです。残りのロシナンテAAの焙煎を毎回じっくり楽しみたいと思ってます。

では、また・・・。


『夏休みのお知らせ』
8/21(土)〜24(火)臨時休業します。
(8/20(金)のご注文は、8/25(水)の発送となります。ご注意ください)

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2004年8月21日 坂本・コーヒーはフルーツだ!・孝文

 

 
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