プロのつぶやき

    週間コーヒーコラム188

珈琲の苗を植える写真

《ブラジル農園の旅》への思い

あれは、僕が24才の頃でしたから・・・もう23年前(おぉ〜そんな昔か!)になりますね。スリランカ紅茶農園を巡る旅へ行って来ました。首都コロンボから車で、キャンディ・ヌワラエリア・ディンブラ・ウバと登って行きました。標高が上がるに連れて・・・木の植生が変わり、風が変わり、陽射しが変わり、気温が変わっていきました。石ころだらけの山のてっぺんの農園に立つと・・・谷の向こうの紅茶畑が、濃い緑色と黄緑色に分かれていました。若葉を摘んだ畑は、緑色なんですね・・・そして若葉を摘んでいない畑は、まだ黄緑色なんです。あの光景が今でもはっきりと思い出せます。そして、その時の陽射し、風、匂いも・・・朝の霧も・・・涼しさも。

製茶工場の扉を開けた瞬間の香り、萎凋室の香り、揉捻機のまわりの香り、発酵室の香り、乾燥室の香り・・・実際に足を運んだからこそ分かった香りの違いです。そして、工場やリプトンのテイスティングルームでのテイスティングした味わい、香り・・・僕の財産です。あの頃は、見よう見まねだけで、たんなる印象しか分からなかったのですが・・・しかし、とっても大きな経験でした。毎晩、ホテルのロビーに集まって、案内してくださった故・斉藤先生(紅茶読本(柴田書店)の著者・・・昭和50年頃に発売されて、難しい内容だったので何回も赤線をひいて読みました)に質問したのがとっても楽しかったことを思いだします。

そして、明日はやっと、やっと、コーヒーの産地へ行けます。さかもとこーひーを開店して約10年、焙煎をはじめてからでも20年近く経ってしまいました。もっと早く訪れたかったですね。でも、このタイミングで良かったようです。スリランカに行った時もそうでしたが、もっと早く、行けば行ったで得るものは大きかったと思いますが・・・それが、自分のコーヒーのクオリティアップには繋がらなかったと思うんですね。良い経験にはなっても・・・じっさい、コーヒーを育てることの何が分かるか?分からないですし・・・もっと美味しいコーヒーを目指していても・・・何にも出来ないですよね。

ここ数年で、スペシャルコーヒーの素材を手にして、その焙煎のスキルアップもすすみ・・・これからの可能性にチャレンジする今、このタイミングを大切にしたいと思っています。ブルボン種、ティピカ種でサンドライ・・・そんな生豆の案内がくると、とってもときめいた時がありました。有名な農園の案内が来たときも同様でした。しかし、最初のロットは気に入っても・・・例外無く、その後は失望の繰り返しでした。ブルボン種やティピカ種でも、素晴らしいコーヒーもあれば、そうでも無いのもある・・・それだけのことなんですが・・・。サンドライでも、全く同じですね。最近は棚干し乾燥の豆を幾つかサンプル・カッピングしましたが、おんなじですよね。棚干しで美味しくはなりませんよね・・・乾燥以前の段階で・・・熟度だったり、精選前の選別だったり、それによる熟度の揃いだったり、精選技術だったり・・・それら前段階がクリアーされて、棚干しの良さが発揮されるんですよね。理解すれば、ほんと単純な理屈なのに、これが、なかなか、全く、僕は分からなかったんです。

そういうことなんで、コーヒーのクオリティに対する重要度のウエイト配分が理解できないと、ラベルに左右されるだけですね・・・○○農園だったり、○○乾燥だったり、○○地域だったり、○○種だったり・・・ね。優秀な農園の中でも数々のロットがありますから・・・上中下とあるのは、当たり前ですよね。同じ農園のコーヒーでも、自分がカッピングして選んだ目の前の素材しか評価できませんよね。そんな基本的なことを理解できたタイミングで、とっても良かったと思っています。

また、農園では、カッピングのスケジュールも入っています。ブラジルの優秀な農園では、スペシャルコーヒーのカッピングトレーニングをしていますし、専門のカッパーを雇っている農園もあると聞きました。我々も、この数年懸命にスペシャルコーヒーのカッピングをトレーニングしてきました。それが、この農園ツアーで威力を発揮します。コーヒーの味覚評価の共通言語ですから・・・同じコーヒーをカッピングして、お互いの感想評価を交換し、我々やお客様の好みも伝えられるんです。こうしてはじめて、日本の、あるいは、我々のお客様の好みをリクエストできるんですね。

この共通言語であるカッピングスキルが無いと・・・コミニケーションできないですから、クオリティアップは難しいことになってしまいます。自分や仲間で通じる感覚、表現はあっても良いのですが・・・それだけでは、産地には伝わらないのが現実です。その為もあって、我々はひたすらカッピングトレーニングを積んでいるんです。その結果、丸山珈琲の健ちゃんは、国際審査員として、すでに数回参加し、そのカッピング能力も毎回進歩し、認められています。カップオブエクセレンスなどの審査の後には、その国の優秀農園を視察していますので・・・かなり細かい点も理解してきています。そんな積み重ねが、《目の前の美味しさ》に直結できると思うんです。それも、一年一年、少しずつですが・・・。

長くなりました、もう寝ます。今回の農園研修の旅だけでは、そうは簡単に農園のことは理解できないと思いますが・・・これから毎年のように続けるつもりなので・・・一年一年《カップ一杯の美味しさ》に結果をだせると思います。【種からカップまで】への一里塚ですね。

では、行って来ます。

《ニコニコほのぼのワクワクな、
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2003年5月23日 坂本・明日はブラジルへの旅・孝文

 

 
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