プロのつぶやき

    週間コーヒーコラム187

コンテスト会場の模様

バリスタ選手権で感じたこと

さて、『コパカフェ』を訪れた翌日からは『ボストンSCAAコンフェレンス』がスタートです。前夜祭、ホテルのロビー、あちこちのブース・・・と笑顔、笑顔、握手、握手、そして情報交換の連続でした。すでにマイアミやアナハイム、それに東京で会っていた方との再会・・・はじめてお会いできた方と様々です。「ハ〜イ♪」なんて、気軽に挨拶するだけなんてこともあります。毎年顔を会わせるんで憶えてくれているんですね。とっても、嬉しいです。

丸山珈琲の健ちゃんは、この1年位で、もう何回も国際審査員として審査に参加していますから、世界のカッパーの知人友人も増えています。そんな関係が進んでいるので我々も紹介を受けた次の瞬間には、深い情報交換に入っていけます。このやりとりや信頼関係作りは、実際に会ってコミニケーションとらないと進まないことなので、毎年こうやってアメリカに集まることがとっても大切なことになってきています。わずか2年前に、お上りさんのような感じで参加したのに!・・・時間というパワーの凄さを実感しますね。ブースでお話しをしていて盛り上がり、急にその晩の食事の約束が決まった日もありました。これから毎年そんな感じの関係作り、コミニケーションをしていくんでしょうね。やり甲斐を感じます。デジタルの世界が、密着、接近した関係を助けてくれますね。

ブースめぐりは・・・ブラジル、グアテマラ、ニカラグア、コスタリカ、パナマ、ケニア・・・といった産地などと、あとは焙煎機やミル他もまわりました。出ているメーカーは毎年そんなには変わらないので、いつも同じようなメーカーのブースを訪れて、だんだん具体的で細かい質問をしています。ヴォアラ珈琲の井ノ上さんをはじめ、マシーン関係に詳しい仲間がしっかりいますから、細かい疑問点が毎年解決していきます。とてもひとりのちからでは無理ですね。

そんなこんなで、今年とても印象的だったのが、【The World Barista Championship】です。去年のアナハイムはアメリカ国内の【United States Barista Competition 】でしたので、それほど強い印象は無かったのですが・・・さすが世界選手権になると素晴らしいレベルですね。

栄えあるチャンピョンは Paul Bassettさんで、 Australiaの「 Espresso Emporium」というお店の方ですね。立ち姿、動き、目線のおくり方、説明・・・どれをとっても自信に満ちあふれ、緊張と緩和のバランスも良く、一流のプロのものでした。エスプレッソやデザインカプチーノをきっちり作れるのは当たり前で・・・プレゼンテーションやオリジナルドリンクのレベルで差がつくように感じました。

そのオリジナルドリンクは・・・カクテルグラスにスノースタイルでシュガーを飾ります。まず、マンゴーペーストをグラスの底に入れます、その時グラスをお湯で温めておきます。エスプレッソを注いで丁寧に混ぜます。グラスを温めておいたのは、混ざりを良くするためもあるでしょうね。シュガーにはシナモンが入っていたと思います。エスプレッソの次ぎはクリーム・・・そうやって味を構成していきます。グラスの脇には大きめのオレンジピールをおいていました。あとは何だったろう?メモして無かったので、ちょっと思い出せません、どうもすみません。

スパイス、ハーブ、フルーツしかもマンゴーといったパッション系です、それにクリーム等々、これらをエスプレッソと構成する発想の素晴らしさ・・・スペシャルティコーヒーの魅力を理解していないと、こういった組み合わせに繋がらないと思いますよ。マイアミでチャンピョンになった Martin さんの仕事を思いだします。(彼は今年審査委員をしてましたね、目があうと、ニコッと笑って手を挙げてくれました。)「プロのつぶやき90」を読み返すと、マイアミでの作品に対して、今回と同じような感想を書いてありました。

『そのオリジナルの珈琲は、しっとり濡れた極上のバニラビーンズ(審査員にわざわざ裂いて見せてました)フレッシュライムの皮を乳鉢で軽く摺って、そこにシュガーを入れてライムの香りシュガー。少しのラム酒?。バニラビーンズを入れてシェーカーで軽くシェイクした生クリーム。 フレッシュのレモングラスの茎?。そしてエスプレッソ。 これをカクテルグラスにどう入れるか? まぁ、琥珀の女王の世界だけど、だいぶレベルが上です。ラム、エスプレッソの上に冷やしたクリーム。その上にライムシュガー、それをカラメリゼ(バーナーで)そこにレモングラスも茎?をストローにします。グラスに口をつけると、カリっとカラメリゼしたシュガー。 そこから流れ込むクリームとエスプレッソはクリームラムライムバニラ全部の香りが脇役になりエスプレッソが見事に主役になってます。 しかも控えめなんだけど、無いと物足りないのがわかります。見事な構成力イメージ力でした。 カクテルの世界ですね。本当に素材のディテールまで神経を使ったオリジナルコーヒーでした。』

エスプレッソやデザインカプチーノを淹れるだけのバリスタでは同じ土俵に立てないですね。スペシャルティコーヒーのエスプレッソやカプチーノの基本ができて・・・スパイス、フルーツ、クリーム、ハーブ等を使いこなし・・・バーマンの仕事からも学ばないといけないですね。

う〜ん、料理やお菓子、カクテル・・・ほんと味覚の快楽全般の知識、技術が必要です。そうですね、例えば生クリームひとつをとっても・・・まず、乳脂肪だけの純生クリームを選ぶのは当たり前としても・・・乳脂肪分は高ければ良いとは云えません。そのお菓子、或いはドリンクにとって最適な%はどの位か?必要ならば自分で調整しますね。お砂糖を入れて、ホイップする場合は、砂糖の量とは別に、どの段階で砂糖を加えるか・・・そのタイミングによって印象が変わってきます。最初から入れると、砂糖が完全に溶けてしまいますから、ベターっとした甘さを感じてしまいます。半分の量をホイップの途中で加えると、同じ量の砂糖でも、甘さの印象が変わって、しつこさがやわらぎます。スパイスやハーブの効果的な使い方、香りの活かし方、フルーツの旬やカットによる印象の違い、シェークの仕方、狙い・・・書き出すといくらでもポイントが出てきますね。しかし、それぞれの専門家にとっては当たり前のことですね。

自分がいるコーヒーの世界に、こんなレベルのジャンルが育っていることに、大きな喜びを感じました。僕自身は、バリスタでも無いし、これからも家庭向けのビーンズショップとして仕事を進めていくことしか出来ないし、考えていませんが・・・でも、励みになりますし、誇らしく思います。僕は単品のコーヒーやブレンドで・・・同じようなレベルの仕事を目指したいですね。その為の素材探しや焙煎、カッピングのトレーニングをさらに進めたいですね。そんなことを、チャンピョンに精一杯の拍手をしながら感じていました。いよいよ来週はブラジル行きです。【種からカップまで】の《種》に踏み込んでいきますよ。これから、光合成、土壌、積算温度・・・等の復習です。

では、また、来週・・・ブラジルに旅立つ直前の原稿書きになると思います。

《ニコニコほのぼのワクワクな、
  《旬・瞬》珈琲をお届けしています♪》

 

2003年5月17日 坂本・今度はブラジルの旅・孝文

 

 
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