プロのつぶやき

    週間コーヒーコラム168

日の出前

新春コーヒー放談

明けましておめでとうございます。お正月は、毎日2度3度と昼寝をして・・・だんだん疲れが抜けてきました、坂本です。今年も、《旬・瞬》さかもとこーひーを、よろしくご贔屓にお願いします。

そんな昼寝の合間には、『コーヒーの歴史、河出書房新社、マーク・ペンダーグラスト』を読んでいました。
500ページをこえる厚い本でしたので、まずは、ここ20年30年のスペシャルティコーヒーの流れが面白そうな後半から読み始め・・・登場する方々やお店に馴染みがあって、す〜〜〜と読みおわってしまいました。では、と、エチオピアのコーヒー誕生伝説からスタートするはじめっから一応読もうかな、とすすめると・・・
日本のコーヒー本にもしょっちゅうでてくる退屈なストーリーはすぐにおわって・・・この150年200年の、ブラジルや中米産地(グアテマラが中心でした)やコロンビアでのコーヒーの生産が進み、相場にゆれうごき、内戦に疲弊した内情・歴史がリアルに克明に語られていました。そして、アメリカの本ですから、当然アメリカでのコーヒーの普及してきた歴史も詳しく・・・多分前半は読むのが辛いだろうな〜、なんて思っていた予想は見事に外れて・・・3が日でおわってしまいました。

貧困・飢餓・内戦・外圧・欲望・搾取・駆け引き・降霜・地震・干ばつ・自然破壊・・・生産国では今も昔も変わらない大きな問題をかかえていることが、あらためて突きつけられました。また、僕はここ数年、SCAAやカップオブエクセレンスの流れを知って、スペシャルティコーヒーの魅力の可能性に挑んでいますが・・・そのアメリカでのコーヒーの歴史をやっと明確に把握できました。そういった背景を知ると、スペシャルティコーヒーの必然性や方向性の理解がより深まります。(じっさい、これだけ発展してきたように感じられるアメリカのスペシャルティコーヒー業界でも、全体から見ればわずか10%20%のシェアしか無いと云うことですから・・・通常のコーヒーの影響力は想像をこえて大きいことでしょう。産地でも同様なことが理解できます。)

そういった全体像を理解しないで・・・日本の国内事情から云々することの危険性を強く感じました。欧米消費国と生産国の長い歴史があり、コーヒーのある生活が育まれ・・・当然のことながら、そこには大きなビジネスがからみ、戦争によってコーヒーや産地のポジションも変わり・・・そんな端っこで日本のコーヒーがあるという事実、これは入ってきている素材に影響していますし、我々自家焙煎店はその限られた情報、素材から焙煎ブレンド抽出をスタートしているんですね。

さて・・・そこで・・・僕は考えました。マイアミやアナハイムのSCAAコンフェレンスで、たくさんのコーヒー人から聞いたこと・・・また、海外からのメール・・・東京で再会したブラジルサマンバイア農園のカンブライア氏との話し・・・そんな中で特に印象に残っている【アフターCOE】という言葉が渦巻いています。

1997年に発足した『ITC(国連)グルメコーヒープロジェクト』を通じて高品質なコーヒーを生産することで、生産者の収入のアップをはかる可能性を探ったようです。その大きな意味合いが、『コーヒーの歴史』を読んで深く理解できました。

で、その『ITCプロジェクト』を通じて、高品質コーヒーを消費国に普及するためには・・・『風味やおいしさやそれらの印象度を評価対象とする今までに無い品質評価尺度・方式』を取り入れることが必須となったんです。(それまでは無かったのが現実なんです)

次ぎに、その方向性の中で『カップオブエクセレンス』が構築されて・・・生産国における《品質コンペティション》と《インターネットオークション》がスタートしたんですね。
その『カップオブエクセレンス』の使命は《透明性の高い情報の開示を基本として、高品質コーヒーを生産する生産者と、高品質コーヒーを求めるマーケットを直接結びつける事》となっています。

そこで・・・【アフターCOE】になってくるんです。

まず、高品質コーヒーに適用される評価基準ができたことで・・・《物差し尺度》が出来て・・・生産者は消費者が求める高品質コーヒーってのは、何か?それを知ることができるようになったんです。(逆に云えば、それまでは知り得なかったんですね。)

そうすれば、高品質コーヒーと云われるコーヒーの生産の仕方を知り、品質向上を目指せるようになったんです。こうやって、大きな扉が開いたようです。

言葉にしてしまえば、簡単ですが・・・今でもその評価基準をバージョンアップしているように、とても複雑なことは僕にも分かります。背景には、『コーヒーの歴史』に書いてあるような、世界的な規模での、それぞれの立場での、思惑があるんですからね。

【透明性の高い情報】・・・これが持つ大きなパワー威力を実感します。僕自身を振り返っても、コーヒーや紅茶を仕事として、自分の納得のいくクオリティを目指して来た中で、常にぶち当たってきたのが【情報の壁】です。本を読んでも、業界の先輩方々に聞いても、どうして?その先は?そんな疑問がつきまとってきていました。仕方なく・・・味作りという面では、他のジャンル・・・料理お菓子お酒手当たり次第ヒントを求めてきました。それでもコーヒーの核心には手が届かなかったんです。

しかし、ここ日本でも【アフターCOE】の恩恵に与れたんです。【透明性の高い情報】はパワーですね。遠くにやっと《コーヒーの核心》が見え隠れしてきました。繰り返しますが・・・【情報】が【扉】を開くんですね。

SCAAでよく目にするフレーズがあります・・・『from seed to cup』まさに、種からカップまで、コーヒーとその情報が伝わることの先に何か大きな意味がありそうだと、今、感じています。

まぁ、そんな事を考えさせられた『コーヒーの歴史』とお正月でした。

(追伸)
今年の《旬・瞬》さかもとこーひーは・・・僕の普段飲んでいる・楽しんでいる・感じている・・・僕の目の前にあるカップ、そのものの味香りを伝えたい!・・・そこにフォーカスしていこうと思っています。素材も焙煎もブレンドも一応のレベルにきました。お客様もそのスタイルに馴染んで、上手に楽しんでくれています。次のステップは、《僕の目の前にあるカップ》をお届けすることです。お楽しみに!
 

《ニコニコほのぼのワクワクな、
  《旬・瞬》珈琲をお届けしています♪》

 

2002年1月4日 坂本・迎春・孝文

 

 
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