プロのつぶやき

    週間コーヒーコラム167

ホテルのルームランプ

年忘れコーヒー放談(2)

2002年最後の「プロのつぶやき」です、どうもありがとうございました。1年毎にステップアップできて、とっても恵まれています。とりわけ、この秋〜冬になって、お客様の声が違ってきました。まぁ、春の《サマンバイア農園》から目立ってきていましたが・・・《ウイツ・マティグ》《ラ・プロビデンシア》《サン・ルイス》そして、それらを使った《ハッピーX'マス・ブレンド》は、昔から云われている、『おいいしいですよ』『かおりいいですね』『さかもとこーひーのんだらほかのコーヒーはのめませんね』そんな嬉しいご感想とは又違った・・・う〜ん何と云っていいかむずかしいですが、お客様から伝わってくる熱と云いますか、エネルギー、言葉が違うんです。

それが、《トップスペシャルティコーヒーの魅力》だと思っています。多分、昔からお客様に云われ続けてきた・・・『なにかおいしいコーヒーちょうだい』『このあいだのコーヒーおいしかったけど、他のおいしいのはどれ?』・・・そんなお客様は、無意識にこのようなトップスペシャルティコーヒーの魅力を云っていたのかな?と感じています。その時は、「そんなコーヒーどこにあるんだ!」「どんな味がほしいのかな?」「けっこう美味しいとおもうんだけどなぁ〜」なんて、こころの中で思っていました。

さて、そこで今日の本題【焙煎によるクオリティアップ】です。

僕は、《焙煎は調理》だととらえています。普段から云っていますが・・・どんなに焙煎、調理技術のレベルが高くても、研究しても、素材以上の魅力にはできませんよね。わざわざあらためて云うほどのことでもありませんが・・・だからこそ、料理人、菓子職人のみなさんは素材の追求にエネルギーを投入していますね。

まぁ、コーヒーでもそうだったと云えなくも無いですが・・・どうも産地の深い情報を掴むにはハードルが高かったようです。(先輩たち、そして僕自身も、これまで素材を追求してはいたんですよね。でも、何か越えられない厚く高い壁がはっきりと存在していました。)そこで、時代の流れが味方して、情報がどんどん行き交うようになり、我々個人店でも、今までとは違ったレベルでの、素材追求の可能性がひろがってきています。情報はパワーですね、扉が開いたように感じています。

で、次ぎにくるのが・・・《焙煎、調理》です。これも当然のことながら、どんなに素晴らしい素材でも、調理が拙かったら・・・答えは明白です。では、今の時点での僕の焙煎についての考えを云いますね。

そうは云っても、焙煎に対する僕のとらえかたは、昔から何にも変わっていません。このHPでも以前に書いていますが・・・【焙煎は乾熱調理】です。調理は、『湿熱調理(水分を介在した、100℃以内の調理)』と『乾熱調理(180℃前後での調理)』に分けられます。僕は「焙煎ってどういうことだろう?」と昔思って・・・「まぁ、食品だから調理として考えよう」・・・「焙煎機ってオーブンみたいなものだな」・・・そんなことを考えているうちに・・・【乾熱調理】という捉え方を知りました。

その特徴は
・糖類のカラメル化
・ディープフライフレーバー(油を加熱して出来る香り)
・メラノイジン(糖類とアミノ酸、タンパク質が共に150℃以上に加熱された時の反応のよってできる)
にあります。

この3つは170〜180℃前後でできて、200℃を越えると焦げて不快になります。メラノイジンは、とても魅力的な香りで、蒲焼きもケーキやパンの焼く香りも、コーヒーの魅力的なフレーバーも、みんなそうです。
(紅茶は発酵による魅力ですよね、コーヒーの魅力はどこからやってくるのか、きちんととらえたかったんです)

ちょっと堅苦しい話しになりましたが・・・コーヒーの焙煎を考えると、この【乾熱調理】だって思ったんですね。だから・・・【180℃前後で上手にカロリーを与えること】がポイントだって思ったんです。これは強くても弱くてもダメなんですね。

でも、コーヒーには厄介な問題があります。それは《豆が丸くて水分がある》ことなんです。これを上手に処理しないと豆全体が理想的な乾熱調理をできないんですね。表面と芯の部分が均一に焙けないと美味しくないですね。これは《水分抜き》と云って昔から問題になっています。今も焙煎の技術でみんながテーマにしていますよね。

ここまでは、20年前も10年前も、今も、僕の焙煎が変わっていません。

う〜〜ん、はなしが固い固い・・・でも頑張ります。

そこで、ここ数年で素材のクオリティアップとともに分かってきた、進化してきたポイントに進みます。

スペシャルティコーヒーの、爽やかなそして明るい雰囲気感覚、余韻の心地よいスィートさ、フルーティ、チョコレート、フローラル、スパイシーなど魅力的なフレーバー・・・それらを遮る、不快な味があります。
それは、焙煎によって生じてしまいます。

・辛い苦み、明るさに欠ける重い味わい、焦げ味香り、香りの貧弱さ、甘さに欠けたマウスフィール感覚、渋いような不快な酸味・・・・ざらついた味わい。

これらが、カッピングによって、どこに原因があるか分からないと、焙煎の改善のしようが無いですよね。
そこにもカッピングの重要性があるんです。そして、この1年でだいぶ上達してきました。その結果が・・・最初に書いたお客様の熱い声になっていると思います。

では、具体的にいきましょうか。

・焙煎初期のカロリーがまず大切です。これがオーバーすると、豆の表面が焼けて、きちんと辛みにでます。その辛みが、はっきりと出ていると問題外で、美味しくは感じられないんですが・・それよりも辛みと分からない位に微妙な表面焼けは・・・フレーバー、スィートネス、マウスフィール、アシディティと全ての魅力を阻害してしまいます。

・水分抜きが不十分だと・・・明るさに欠けた味わいになります、フレーバーにも影響します、なんか爽やかに欠けますね・・・そういうことですから、当然余韻の心地よさもでませんね。通常水分抜きの不十分さは、芯のこりといった、煎りムラによる雑味ざらつきにつながりますが・・・ここで云っているのは、もっと微妙な水分抜きのことです。

・そして仕上げの焙煎工程です・・・乾熱調理(最近、ドライ・ディスティレーションという言葉を使っています、欧米で使われているようです)ここのカロリーが不足しても、オーバーしても、充分な魅力が出来上がりません。アンデベロップメントと云っています。この焙煎工程で豆の表面から芯まで、少しでも理想的な乾熱調理をすることが、焙煎のポイントで・・・それによって、『スペシャルティコーヒーの魅力』が生まれてくると思っています。

・おっと、ロースティングポイントがありましたね・・・これも1℃単位で、印象が変わってきます。この辺は焙煎人の感覚センスが出てきますね。

お疲れさまでした、こんなことをやってきたこの1年でした。これらは、カップオブエクセレンスのコーヒーをはじめ、最近使っているスペシャルティコーヒーの素材の可能性に触れてはじめて見えてきたことです。
以前はそこまでの検証の必要性は感じなかったんですね。そして1年前2年前の焙煎は、もうひとつふたつ素材を生かしきれていなかったことを感じています。難しいもんです・・・分かってしまえば、毎日の繰り返しですから、それほど難しくないんですけどね。

こうやって素材があって、焙煎をして・・・次ぎに抽出があります。その辺は又来年にお話ししたいと思います。

最後に、今年1年、お引き立ていただき、本当に、ありがとうございました。では、新年1/5アップの『プロのつぶやき』でお会いしましょう。

良いお年をお迎えください。
 

《ニコニコほのぼのワクワクな、
  《旬・瞬》珈琲をお届けしています♪》

 

2002年12月29日 坂本・《旬・瞬》・孝文

 

 
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