プロのつぶやき

    週間コーヒーコラム165

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年忘れコーヒー放談

12月10日の深夜、1時から、【2002ブラジル・カップオブエクセレンス・インターネットオークション】が行われました。終了したのは、朝の7時半すぎという、今までで最長となる激しいやりとりでした。

そこで、丸山珈琲を代表とする、我々全国の仲間のチームは、幸運なことに、【1位Agua Limpa】(26袋/60キロ)を落とすことができました。
http://www.brazilcoffees.org/index.cfm?page=coe_winners

今では、かなり有名になってきた【カップオブエクセレンス、インターネットオークション】ですが、我々は去年のグアテマラ《ダニランディア》を初めて落とし、2001ブラジルは、あの《サマンバイア農園》そして、今年は、グアテマラ《ウイツ・マティグ》《ラ・プロビデンシア》ニカラグア《サン・ルイス》と順調に【カップオブエクセレンス受賞豆】を獲得し・・・みなさまにお届けし、共に楽しんできました。

そして、まさか実現するとは思えなかったのですが・・・なんとか栄光の1位を思う存分焙いてみたい!・・・うちのお客様たちと一緒に体験したい・・・そんな欲求が高まり、チャレンジしました。でも、見えない相手があることですし、価格もよめませんから・・・期待と不安が交差していました。(無理かなぁー、でもチャレンジするしかないなぁー・・・。)

1位の豆をゲットしたい!・・・そこには、勿論、先日のブラジル大使館セミナーでの彼らのカップオブエクセレンスに対する姿勢や思い行動、歴史にじかに触れたり・・・その前には、マイアミとアナハイムでのSCAAコンフェレンスのパーティなどでの産地の方や関係者との出会い、サマンバイア農園のカンブライア氏との交流によって触発されたものが大きいです。お互い、顔が見える関係になってきたことがパワーになっていますね。(単に、ネット上のやりとりでの取った取られたでは無くて、お互い顔の見える、コミニケーションが取れている関係を大切にしたいんです。)

【カップオブエクセレンス】による産地のモチベーションアップ、情報公開、クオリティアップの為のスキルアップ・・・トップクオリティを求めるスペシャルティコーヒーロースターとの出会いの場・・・スペシャルティコーヒーに魅力を感じてくださるお客様たちへの紹介・・・そんな意義への共感がベースにあります。

しかし、それならなにも1位で無くても良いですよね?ましてや、我々は本当に小さな個人店の集まりですから、お金も力も全く無いですから・・・無理する必要は無いんです。

まぁ、あるとすれば・・・みんなの個人的な欲ですか!それは、それぞれのお店のお客様たちに、是非1位のコーヒーを届けたい・・・そういった欲もあります・・・それ以上に、焙煎人職人として体験したい!・・・その欲望が強いでしょう!・・・そして、この2年3年、ITC国連コーヒーからはじまったスペシャルティコーヒーへの旅も進み・・・グアテマラ2回、ブラジル、ニカラグアと【カップオブエクセレンス受賞豆】を経験してきて、また以前には日本に入っていなかったスペシャルティレベルの素材を普段から思う存分に使って、焙煎も進化してきたので・・・今なら、1位の素材に真っ向から挑み、その魅力をお客様に届けられる自信があるからと云えます。(勿論、今までに、カップオブエクセレンスのコーヒーをお届けしてきて・・・お客様の期待や喜びがひしひしと伝わってきている・・・そんな後押しは、我々を大きく1歩踏み出させるパワーになっています、どうもありがとうございます。)

振り返ると、もう3年前になりますか・・・ITC国連コーヒーに出会って、

  • コーヒー生産地、栽培場所の自然環境(気候を含む)、特に海抜標高、土壌の特性。
  • コーヒーの木の品種、在来種
  • 収穫時のチェリーの平均熟度、特に未完熟実の混入度合い
  • 精選処理方式、乾燥処理方式。

これらの要素のどれもがとても大切なことを知りました。
その後、マイアミとアナハイムでのSCAAコンフェレンスへ参加して、さらにたくさんの素材や情報に出会いました。その後は、カップオブエクセレンスや他のスペシャルティコーヒーを毎日焙煎してきたのは上に書いたとおりです。

そんな毎日の中で、じゃぁ、素材素材、スペシャルティスペシャルティと云っても、何から優先順位をつければ良いのか?そんな疑問にぶちあたりました。(できるかぎり理想に近づきたいですからね)

と、云うのも、僕もそうだったのですが・・・ついつい、品種や精選方法に目がいってしまうんです。でも、ブルボン種ティピカ種がどうしたこうした、サンドライがあーしたこうした、どこそこの産地だ農園だ・・・そういった豆は以前からたくさんあったんですよね。それでは解決しないのは、すでに経験して分かっているんです。

《品種》が大切なのは分かる・・・でもどの位の比重で影響するのか?知りたいですよね?テロワと云われる《生産地の自然環境や標高気候土壌の特性》が大切なのは分かる・・・じゃぁ、品種とのバランスは?知りたいですよね?《収穫時の熟度》はどうなの?適切な熟し具合は?《精選処理》の工程で本当のところ何が重要なのか?

僕なりに仮説を考えてみました・・・熟度や精選処理のレベルが低いと・・・まず、品種やテロワの特性が発揮される以前じゃないかな?そんな結論を出しています。それらがクリアーされて、はじめて品種やテロワの優劣がでるんじゃないかな?

同じ産地、農園でも・・・収穫の初期、中期、終期でクオリティが変わるのは予想されます。そうじゃなくても、同じ農園の同じ時期の豆でも、上中下・・・或いは、上の上、上の中、上の下・・・などにクオリティが分かれるのも予想されます。有名などこそこ農園のコーヒーだからって云っても、それだけでは品質の保証にはならないことは、様々に経験してきました。(農園名、品種、歴史、サンドライなどの条件を売りにするのが、プレミアムコーヒーです。繰り返しますが、それだけでは、おいしさの証明にはならないことがはっきりしています)

最終的には、目の前のカッピングで、判断するしか無いのです・・・これが又ハードル高いので、苦しんだり楽しんだりして、トレーニングの繰り返しをしています。

ふぅ〜〜、そんなことを日々考えながらの2002年の1年間でした。

で・・・《カップオブエクセレンス1位》です。そんな疑問の糸口のひとつにしたいんです。様々な厳しい条件を見事にクリアーし、つくられた・・・まさに手作り、工芸品、クラフトと云いたい素材です。そんな素材をアルチザン職人として、光り輝かせてみたい!その結果何が見えてくるか?何を掴めるか?そういった欲望が、無謀とも云えるチャレンジに向かわせました。そして、幸運がほほえみました。

こんな零細な個人店でも、仲間が集まり、パワーを結集して、自分たちの欲望に素直に従い、こわばる気持ちと身体をリラックスさせて、まず初めの一歩を踏みだし、お客様の後押しを頂き、一段づつステップアップすると、世界のトップスペシャルティコーヒーロースターと競って、ここまで実現できました。

僕がこの仕事に就いた頃(28年前になりますね)自家焙煎という自分でコーヒーを焙く店を知り、そんなことはどうやれば出来るんだ?と思いました。でも、今は大きくなっているコーヒー会社は戦後にほとんど個人店レベルでスタートして、喫茶店の急激な増加の波に乗ってどんどん成長してきたんです。そして、喫茶店はピークを迎え、減少していき、今度はカフェとなって生まれ変わっています。また、家庭でのレギュラーコーヒーは通のお父さんやマニアのものから、どんどん日常のコーヒーに成熟していっています。自家焙煎店も全国的に増えました。

そんな土壌で育ってきましたが・・・ここ数年の試み試行錯誤種まきから、素晴らしい芽がでてきたようです。来年2003年は、この小さな芽を大切に育てます。みなさんのとても温かな応援が前進するパワーになっています、どうもありがとうございました。2002年を振り返っていたら、最後に夢のようなご褒美が待っていてくれました。

では、また、来週。

追伸:素材素材と強調していますが、焙煎も豆のコンデションも、ミルも抽出も、勿論大切です。でも、素材のクオリティが低くて、焙煎も拙いのに、挽きや抽出を工夫しても、限界は見えてますよね?簡単な話です。
だから、自分で焙煎する自家焙煎店が増えたんですよね。だったら、次は素材だと思うんです。では素材の優劣ってなんだ?そこを追い求めているんです。しかし、これを理解しないプロがとても多かった業界なんですね。素材が良くても、焙煎が悪ければ、これもつらいのは明白ですよね。素晴らしいコーヒーでも古くなれば魅力はどこかに飛んでいってしまいますね。それらを、全部カッピングで判断できることが、僕は重要だと思っています。焙煎によるクオリティアップの話しは今度します。
 

《ニコニコほのぼのワクワクな、
  《旬・瞬》珈琲をお届けしています♪》

 

2002年12月14日 坂本・1位Agua Limpa・孝文

 

 
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