踏込んだ美味しさ

　予約が取れない店として有名なだけあって、美味しくて安くて、気に入りました。

　７月９日の日曜日にワイン仲間３人で初台のレストランキノシタへランチに行ってきました。初台の駅から静かな商店街を歩いていくと、ひと昔前の喫茶店のようなお店が目指すキノシタでした。中は２０席位のこのまま喫茶店になりそうな四角い地味な内装です。

　お昼でしたが、前もって夜の３５００円のコースをお願いしてあります。前菜とメインを選び、シャンパンで乾杯、ワインはメルローが良いかなと話していたら、ここのシェフの好みがブルゴーニュということで、お奨めに従いました。

　そして、出てくる料理がボリュームはあるし、美味しいし、安いし、予約が取れない位の人気が納得です。満卓による賑やかな雰囲気も良い感じです。

　ボリュームは少なめでこぎれいな盛り付け、が多い最近のレストランですが、前菜で皆が驚くほどたっぷりと、またシンプルでバランスの良い食欲をそそる盛り付けです。
　食べ始めると塩のしっかり効いた味付けで、添えられた野菜とのバランスも良く、どんどん飽きる事無く頂けます。

　インターネットのレストランガイドでの下調べでは、絶賛と味付けの濃さ、塩辛さを指摘するパターンが目立っていました。それらの感想が頷ける料理です。
　ただ、私にはシェフの味わって欲しい味わいが明確に伝わってきて、それが私の好みにも合ってニコニコしてました。評判のお店に行ってももひとつ物足らない味が多く、個人店なのに何でもっと輪郭のはっきりした料理を出さないのかという、印象がありました。

　それは、決して味付けが濃ければ良いということでなく、うす味でも、優しい味でも輪郭をはっきりさせた、シェフのイメージが伝わってくる料理、素材の香りや味わいが魅力的に調理された料理ということです。

　その点、キノシタの料理はとても嬉しい美味しさでした。小さなお店は八方美人を目指しても意味無いので、このように一歩踏込んだ美味しさを出して、とてもお値打ちな値段にすれば、お店が考える魅力と相性の良いお客様で予約いっぱいになるという、好例です。

　デザートまできちんとしていて、あとはコーヒーです。
　エスプレッソですが、量が多く（仏レストランだからか）レギューラーコーヒーが泡だっているタイプですが、新鮮なコーヒーで不満なく頂きました。

　帰り道、最近多くのサンプルを焙煎している私は、今後のメニュー改正やその為の味作りに思いを馳せました。７年やってきて結局私が自分の好みを抑えた、変にお客様に気を使ったコーヒーは人気が無いのです。私と相性の悪いお客様はどっちみちリピートしてくれないので、当店に慣れない方に親切にと思って用意した豆は回転が悪くなってます。そんなコーヒーは私の薦め方にも迫力が無いんでしょう。そんなコーヒーは止めます。

　追伸　だからと云って、全部深煎りになるとかそんな狭い好みではありません。