焙煎とマーケティングの実際 9

さかもとこーひーの焙煎(4)

 「深煎りシモサカ」('99〜00 #18 カルモシモサカ)3キロ、5釜目(直前の焙煎豆は深煎りコロンビア2キロ)の焙煎です。

 ガス圧は80、温度は230℃ダンパーは2(8段階)で釜に投入します。( 室温15℃ 湿度64% )

 2分半位で温度(豆温)の下げが止まります。ここで110℃から115℃の間に来るように投入温度とガス圧を設定してます。下げ止まった温度を基準にして焙煎時の温度上昇のスピードを測りコントロールしてます。直前に何を何キロ焙いたか、気温、風の強弱、何釜目か等により調節します。

 112℃で止まり、120℃で3.8分、130℃で4.9分、140℃で6.0分です。この140℃が次の基準になります。この辺までは豆が暖まり蒸らしている状態と考えているので、それ程微妙な違いは出ません。この間の温度上昇のスピードで釜の状態を把握して次の段階の火力調節の参考にします。

 140℃〜1ハゼまでの時間で焙煎スピードをコントロールしてます。

 7分でダンパーを全開にします、148℃でした。大体150℃前後まで蒸らしをしてます。勿論豆によって多少変わります。同じ豆でも少し調整することもあります。ここまでがいわゆる「蒸らし」です。「蒸らし」という表現を嫌う考えもありますが、私は「蒸気乾燥」という捉え方をしていて、とても大切なことと思ってます。ここでダンパーを全開にするのを「チャフ飛ばし」という方もいますが、確かにチャフが飛びますがそれよりも蒸気を飛ばす気持ちでいます。

 「蒸気乾燥」は木材の乾燥や、大きな焼き物の乾燥、他いろいろな乾燥に使われます。コーヒーの場合、豆が丸く芯からいかに水分を均一に抜くかがひとつのポイントになります。小型焙煎機では火力他の性能により一気に芯からの水分抜きは無理でしょう。ダンパーを閉め気味にして釜の中に蒸気を貯めて豆の表面 からの乾燥をコントロールしながら芯まで熱を伝えて芯から水分を抜きます。(店によってニュークロップや固い豆を避けたり、オールドビーンズを売りにしたり、ダブル焙煎をしたり、熱風式のほうが焙きやすいと言ったり皆この芯から水分を抜くことに関連してます)

 この「蒸らし」をどこの時点までするかでコーヒーの味の性質が変わります。

 蒸らし段階のダンパーを全閉にする人がありますが、私は2キロの焙煎で1/8 開、3キロ5キロで2/8です。全閉にすると熱がバーナー口から戻ってくるので熱の無駄 になると考えてます。蒸らすといっても多少は開けてます。この辺の頃合いも店の個性につながっているでしょう。

 3キロで0.9分全開にして、次は2.5開にしてます。2キロは0.7分、5キロでは1.0分全開にしてます。キロ数によって蒸気を逃がす時間を変えているということです。この時間が最適かどうかは分りませんが、取りあえず不都合無くやってます。

ここまでが、投入から蒸らしまでの第1段階になります。ケーキなどのオーブンと一緒で予熱、温度、火力設定をして、蒸らしで豆を暖めながら芯から水分を抜いていきます。ここでしっかり焙く準備が出来れば、固い豆だろうがニュークロップだろうがなんの問題もありません。コロンビアが難しいなんて考えられません。ダブル焙煎の必要性も理解できません。蒸らしの状態は豆の色形、蒸気の出具合、臭いの変化等で観察すれば誰でも分ります。豆を噛んでみると状態の変化がより一層分ります。

 蒸らしをどこまでするかは焙煎する人の好みが出ます。弱いと焙きが甘くなり、香りも味も弱くめりはりの無いコーヒーになります。強過ぎると抜けてコクがなくなりますが豆面 の膨らみは良いようです。

 これで蒸らしの段階までについては殆どかな?
 次回は140℃からの第2段階です。質問が間に合えば次回の始めでお答えします。

 
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