焙煎とマーケティングの実際 14

ABC分析の誤解

 私が喫茶業界に入り、業界誌を読み始めた25年位前には既にABC分析の手法は有名でした。マーケティングの遅れている喫茶や飲食業でも良く使われた、又今でも使われている方法ですが、あまり効果が上がったという話しを聞きません。

 確かに、右肩上がりの高度成長期には、押し寄せるお客様、満卓のお客様を相手にもっと儲けるためには、無駄なC部門のメニューを削り、より利益の大きい商品や高単価な料理を売ることで更なる売上や利益を追求したのでしょう。(店側の効率を上げるというニュアンスをその頃感じてました)そんな時代もあったのです。

 時は経ち、不景気な空気に覆われた今の時代に人気の無いBやC部門の商品を削ったとしても、お客様にとって魅力の無いお店であることに何の変わりもありません。

 昨年に比べて同じ位の売上、或は悪くなっている店はお客様の支持を得ていないということです。つまり、A部門の商品に魅力的なものが無い、少ないという恐ろしい現実に直面していると云えます。大切な事は、A部門に昨年よりも伸びている商品(20%以上)があるか?B部門からA部門に上がってきた商品があるか?です。

 あれば、お客様の支持が目に見えているのでそのお店は期待できます。

 つまり、B・C部門よりもA部門の商品力のチェックが重要だと云えます。

 では、私はABC分析をどう活用しているか、、、。

  • トップの人気商品の移り変わり(季節による変化も考慮します)
  • ある商品の新発売時点での反応、そしてその後のリピートの変化
  • 深、中、浅煎りのグループ別の構成比の変化
  • A、B、C部門間の商品の移り変わり

大雑把にですが、以上の変化をチェックして当店のお客様が今、或はこれから何を求めているのかを考えます。勿論、普段接しながらお客様の直の声を参考にしてますが、お客様自身もまだ気が付いていない希望や欲求がありますので、その辺を掬って形にすることを私は重視してます。

 そのように気にかけることで、色々と来るサンプル生豆を当店で扱うかどうか、扱うと決めたらどのような焙煎をするか、何よりも価格をどうするか、そしてネーミングはどうするか、などが迷い無く決められます。

 勿論はずすこともありますが、その繰り返しで最近は比較的お客様の反応が良く、人気商品の売りだしに成功してます。このような仮説実行検証(プラン・ドゥ・シー)は新商品の発売だけで無く、セット割引や他のサービスを始める際にもとても有効です。

 つまり、お客様の声を聞くいち手段と云えます。直接聞こえてくるお客様の声、普段感じる聞こえてはこないお客様の声、数字に出てくるお客様の声、等々を受け止めて店の進む方向を決める助けにしてます。(ファミリーレストラン他に置いてある「アンケート用紙、お客様の声」等にはオーナーは何を考えているんだ?といつも思います。〈非常に良い、良い、普通、悪い、非常に悪い〉なんて聞き方で何が分るのか、お客様に失礼だと思わないのかと、、、。
 自店のお客様が何を求めているのか、お客様が意識していないご希望をプロである店側が感じとって、始めてご贔屓にしてもらえると思います)

 ABC分析の利用法は他に、A部門B部門C部門のそれぞれの商品の位置付けと云う考え方も出来ます。つまり、野球で云うと1番2番打者、3番4番打者の役割の違いです。

 ちょっと、疲れたので次回は「もうひとつのABC分析」にします。お楽しみに!

 
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さかもとこーひー